日本政策投資銀行の見直しを契機に、金融の枠組み全体の議論を

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 大手企業ですら、資金調達が困難化するほどの苛烈な流動性危機に直面し、政府はDBJに危機対応業務の実行を指示。さらに09年6月26日、DBJの民営化プロセスを凍結する「新DBJ法改正法」を国会で成立させた。

同改正法は、政府保有のDBJ株式の処分を凍結するとともに、「11年度末をメドとして政府による株式の保有を含めた会社のあり方を見直し、必要な措置を講ずる」こととしている。

それから1年半が経過した。リーマンショック後に生じた世界的なパラダイムシフトは今も続いている一方で、わが国では、同ショックで誘発された著しい流動性危機はほぼ解消されているといっていいだろう。

そうした中で、最近、大手銀行の営業現場からは、こんな怒りの声が伝わってくる。

「民間金融機関が十分に対応できるプロジェクトファイナンス案件をDBJに奪われた」

資金需要の発掘に苦労している営業現場からすれば、「DBJは民の補完の官に徹せよ」と文句を言いたくなるようなケースであり、民間銀行マンが抱く痛恨の気持ちは理解できる。同情もするが、あえて言えば、それはDBJには酷な話だ。何しろ、DBJは民営化プロセスが凍結中であるとはいえ、民営化という方向が完全になくなったというわけではない。

「民の補完に徹せよ」と責められても、そうであれば、「自分はいったい何なのか?」と自問自答したくなるところだろう。要するに、DBJは今、前にも進めず、後に引き返すこともできない。いわば、宙ぶらりんな立場に置かれている。

それでは、何が悪いのか。結論を急ぐならば、DBJを宙ぶらりんのままに置いている政府ということになる。しかも、前述したように、新DBJ法改正法は「11年度末をメドに見直す」としている。11年度末まで、残すところ、わずかに1年余り、だ。1年後など、あっという間に訪れてしまう。それにもかかわらず、今のところ、政府にDBJ問題の検討開始の動きは一向にない。少なくとも、外部からは、その動きは見えない。ギリギリになってのやっつけ仕事はごめん被りたい。

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