日本政策投資銀行の見直しを契機に、金融の枠組み全体の議論を
ある財界人が最近、驚き、あきれる経験をしたという。
経済団体が主催した勉強会における、某大手銀行トップ経験者の発言についてである。それは国際展開に向けた自行のスタンスを説明した次のような発言だ。
「JBIC(国際協力銀行)の後について強化する」
JBICは最近、国策的な海外投融資を積極化させている。この動きに追随するという主旨の発言だ。だが、この財界人に言わせれば、「官は民の補完という主張はなくなったのか」という苦笑いの感想しか浮かばない話だった。
もちろん、JBICが実行している投融資は、民間銀行業では、対応が困難な案件ばかりである。プロジェクトの性質もさることながら、投融資期間が超長期であることも民間金融機関が主体となることを阻んでいる。
それだけはない。今後導入が予定されている新たな国際銀行自己資本比率規制(バーゼル3)によって、銀行にはリスクアセット(資産)への制約が増すことを念頭に入れれば、「超長期の与信は従来よりも極めて難しくなる」(メガバンクトップ)だけに、この先、JBICの存在感は強まりこそすれ、後退することはない。
しかし、だからと言って、「民間銀行業の矜持はどこに?」というのが冒頭の財界人の結論だ。確かに、郵貯問題などを見ても、最近、民間銀行業はおとなしい。
宙ぶらりんのDBJ
政策金融の分野で、JBICと双璧をなしてきたのが日本政策投資銀行(DBJ)にほかならない。
しかし、DBJは自民党政権による改革路線の一環として、民営化されることが決定。DBJ自身も民営化に向けた準備を重ねていた。その矢先に突然発生したのが2008年9月のリーマンショックによる著しい金融危機だった。