表舞台から忽然と姿消した「ウイスキー」復活の訳 70年代には蒸留所が2000以上から2カ所に減少

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■クロナキルティ蒸留所

アイルランドの南端、大西洋に面した断崖に、2018年にオープンしたクロナキルティ蒸留所。創業者のスカリー家は8代続く農家で、大麦を育てています。大西洋の柔らかな雨や波しぶきなどのミストが大麦に個性を与え、岩盤奥深くからくみ上げられた水によって、海の恵み豊かなウイスキーを生み出しています。家族経営の畑で育てた大麦を使い、銅製のポットスチルで3回蒸留する、伝統的なポット・スチル・ウイスキーです。

「クロナキルティ シングルバッチ・ダブルオーク」

モルト・ウイスキーとグレーン・ウイスキーをブレンドし、追加熟成に使う樽に特徴を加えています。アメリカンホワイトオークの新樽と、NEOC(赤ワインの樽の内側を削り、トーストし、さらにリチャーしたもの)の活性樽が使われています。アロマはふくよかでフレッシュな穀物の香りに、かすかに海のイメージも。ミディアムボディーで、徐々にバニラや青りんご、ジンジャー、ナッツのようなフレーバーが現れてきます。

■スリーブ・リーグ蒸留所

アイルランドの北西、ドニゴール州の大西洋に面したヨーロッパで最も高い断崖絶壁に2017年オープン。19世紀初頭以来の蒸留所で、この地の蒸留酒文化の復活を目指しています。その後、生産規模拡張のため20kmほど離れた場所アーダラに移転し今年1月から新たな施設で蒸留を開始。2021年サンフランシスコでワールドウイスキーアワードを獲得した「ザ レジェンダリー・シルキー」と、5種類の海藻を含む11種の植物を使ったジンの「アン・デュラマン」が代表的な銘柄。

「ザ レジェンダリー・シルキー」(ブルー)

2回蒸留と3回蒸留のモルト・ウイスキーとグレーン・ウイスキーをブレンド。モルト原酒にピート麦芽の原酒も2%使用しています。香りがグラスに注いだ瞬間からリッチでスイート、かつディープ。焼きリンゴやラムレーズンのような、芳醇なアロマです。フルーティさに、グレーン・ウイスキーのもつ滑らかさが一体となり、後からピート麦芽のスモーキーな要素が追っかけてきます。世界が知るべきアイリッシュウイスキーでしょう。

いかがでしたか? アイリッシュウイスキー、飲んでみたくなったでしょ? 軽くフルーティで飲みやすいアイリッシュウイスキーなら、女性にもおすすめ。彼女と一緒に飲み比べを楽しんでみてはいかがでしょう?

● 土屋 守(つちや・まもる)
1954年新潟県佐渡生まれ。ウイスキー文化研究所代表、ウイスキー評論家。学習院大学文学部国文学科卒。大学卒業後は、フォトジャーナリストとして足かけ6年ほどインド、チベットに通い、雑誌「太陽」「アサヒグラフ」などにチベットを舞台としたフォトドキュメントを多数発表。1982~87年、新潮社「フォーカス」編集部勤務。取材記者として主に政治、経済、事件ものを担当。1987年秋に渡英。1988年から4年間、日本語月刊情報誌「ジャーニー」編集長を務める。取材で行ったスコットランドで初めてスコッチのシングルモルトと出会い、スコッチにのめり込む。1993年帰国後は5年間の英国生活、英国取材の経験を生かし、主にスコッチウイスキー、紅茶、ナショナルトラスト、釣り等の英国のライフスタイルを紹介した著書、エッセイ等を多数発表。1998年ハイランド・ディスティラーズ社より「世界のウイスキーライター5人」の1人として選ばれる。

アイリッシュウイスキーが飲めるお店

「TOKYO Whisky Library」は世界のウイスキー1200種以上を保有する日本トップクラスのバーラウンジ。アイリッシュウイスキーも約50種ほどそろっています。

住所/東京都港区南青山5-5-24サンタキアラ教会2階

HP/http://tokyo-whisky-library.com

TEL/03-6434-1163

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