トヨタが乗り出す、「賃金制度改革」の真相 社内の少子高齢化が悩みのタネに
賃金制度の改定のほかに、現場の監督である「GL(グループリーダー)」やGLを統括する「CL(チーフリーダー)」の肩書を、それぞれ「組長」「工長」へ変更することも提案。「組織を統率し人材育成を進める責任者である『長』であること今まで以上に意識し、メンバーにも認識して頂くため」と説明している。名称変更に伴って、組長、工長には職位手当を導入することで、人材育成への意識づけを強化する狙いもある。
一方で組合側は、求められる役割を実践する課題として、GLは5大任務(品質、安全、生産、原価、人事)の負荷が大きく、面倒を見るに時間が取れないこと、CLは数年で異動するケースがあり、後継者を計画的に育成する難しさがあることを挙げている。
全体の賃金制度改革について、議論の必要性は認めつつも、大きな変更となるだけに組合側は慎重に進めることを求めている。たとえば、年功による昇給割合の縮小は評価の公平性・納得性やチームワークへの影響を懸念する声がある。再雇用時の待遇についても、会社案は「余人を持って代えがたいような卓越した技能を有する人材」としており、限られた一部の対象とすることへの不安感も持っている。
「意思ある踊り場」で体質強化
グローバル販売で1000万台を達成したトヨタは現在、足元を「意思ある踊り場」と位置づけ、持続的な成長に向けた基盤作りを進めている。
2013年度から工場新設を3年間、原則として凍結してきた。まず既存ラインの有効活用を徹底することで生産性をさらに引き上げることが狙いだ。現状は、飛躍的に生産性を高めた計画ならば、必ずしも工場新設を否定しないトーンに変わっているものの、安易な新設をいさめる方針は変わっていない。
生産面の体質強化だけでなく、ディーゼルエンジンやブレーキ事業など、トヨタグループ内で重複していた部品生産の再編整理にも乗り出しており、「踊り場」からさらなる飛躍に向けた準備に余念がない。直近、「足元は強くなったが、20年先を見据えて今手を打つ必要がある」と、トヨタ首脳が語っていた。その言葉通りに自動車業界の巨人は歩を進めている。
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