小林薫×阪本順治「天狗だった30、40代を越えて」 70歳、63歳になった今だからこそ語れること
――映画『冬薔薇(ふゆそうび)』のお話も。パンフレット内で主演の伊藤健太郎さんが阪本監督と2人きりで打ち合わせをしたときに、こう語っていたそうですね。「今の僕と仕事をしてもリスクしかないと思うんですが、どうして話を聞いてくれたんですか?」と。それでも阪本監督は、伊藤さんへ渡口淳(とぐち・じゅん)役を当て書きして脚本を執筆しました。
阪本:大前提に、「リスクを避けて映画を撮るのはつまらないよな」という思いがありました。すべての作品にリスクがあるわけではありませんが、『KT(ケイティー)』(2002年公開の、日本と韓国の合作映画)で1973年に起こった金大中事件という拉致事件を取り扱った作品は、韓国では2週間ほどで上映打ち切りになりました。
ネット上では、「反日」とか「売国奴」とも叩かれたんです。ですが、その事態は作品を撮る前から予測できていました。健太郎はそう言ってくれましたが、僕はリスクだと考えませんでしたし、彼を叩く人の矛先が自分にも向くのかもしれませんが、そんなことばかりを考えていたら、映画は作れませんからね。
簡単なことではないですが、作り手が安全な場所にいて作った作品は、個人的にはおもしろくないと思っています。その思いは、観客のみなさんにも伝わると考えてこの作品に挑みました。
6月3日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
脚本・監督:阪本順治
出演:伊藤健太郎 小林薫 余 貴美子 眞木蔵人 永山絢斗 毎熊克哉 坂東龍汰 河合優実 佐久本宝 和田光沙 笠松伴助 伊武雅刀 石橋蓮司
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