休日の土曜夜「ニュース番組ばかり」の残念な真相 テレビ局が直面する「若者放置」のジレンマ

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私が各局の局員や制作会社のスタッフ、芸能事務所関係者、テレビ誌の記者らの誰に話を聞いても、その状況を良いこととは思っておらず、「ニュース番組が多すぎる」「このままでは視聴者が減る一方」などの厳しい言葉が返ってきます。

厳しい言葉の理由は、「ニュース番組が多すぎる」というだけでなく、「このままでは若者だけでなく30~40代や高齢者まで、多くの人々がテレビから離れてしまう」という危機感によるものでした。「平日だけでなく土日までシリアスなニュースを見たくない」「休日くらいは笑ってのんびり過ごしたい」というニーズと、供給されている番組の内容や数が合っていないということでしょう。

では、なぜテレビ局はその状況をわかっていながら、土曜夜から日曜昼にかけて多くのニュース番組を放送し続けているのか。その理由は単に「視聴率を確保するため」でしかないようです。

Netflixなどの動画配信サービスやYouTubeをテレビ画面で見る人が増え、地上波の番組ですらTVerなどで配信視聴する人が増えました。もちろん録画しておいた番組を見る人もいる中、テレビ業界は「リアルタイムで放送を見る人は今なお減り続けている」という苦境の真っただ中にいるのです。

リアルタイムで見る確率が高く、視聴率につながる番組は、ここにきてさらに減り、「ニュース番組か、音楽やスポーツの大型イベントくらい」が大方の見解。ドラマは「すでに録画視聴と配信視聴のほうが多い」と言われ、バラエティも「人気番組でなければニュース番組を上回ることはできない」という目で見られているのです。

ニュース番組の競争激化は自業自得

ただ、「視聴率が獲れれば何でもいい」というわけではありません。2020年の視聴率調査リニューアル以降、民放各局は多少のバラつきこそあるものの、10~40代をメインターゲットに定めた番組制作を進めるように変わりました。これは「スポンサーの望む視聴者層でなければ、これからはCM収入が得られない」ということであり、取引の現場でも「コア層」(各局によって呼び方が異なる)と言われる視聴者層の個人視聴率が使用されています。

ところがニュース番組の主要視聴者層は、誰がどう見ても50代以上。実際は「60~80代がメインの視聴者層」とも言われていて、決して10~40代の「コア層」ではありません。そのような高齢の視聴者層で獲得できるスポンサーは限られているだけに、ニュース番組を放送してもテレビ局が儲かるということは考えにくいのです。

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