需要下げ止まりの起爆剤、 「滞在人口増加策」を急げ--上野泰也・みずほ証券チーフマーケットエコノミスト《デフレ完全解明・インタビュー第10回(全12回)》

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移民については地方の人と話すと抵抗が強い。しかし、介護・看護の分野で人が足りないと言いながら、移民労働者は嫌だというのは矛盾している。資格要件を下げてでも、受け入れを積極化する必要が十二分にある。「移民」という言葉に抵抗感があるならば、最初は観光客と移民の中間の長期滞在者として受け入れるのも一つの手だろう。

人口減少が進み、地域経済がもたなくなれば、ボトムアップで外国人の受け入れが進む時代が来ると見ている。日本の未来図が地方にある。国はこういう視点での対応をできる限りしていくべきだ。

日本人に対しては、子どもを産もうというインセンティブになる減税制度とつねにキャパシティに余裕のある保育施設の整備が必要だ。子ども手当は廃止して、児童手当に戻し、浮いたおカネをこれに回すべきだ。

政権を取る前の民主党は人口問題にまともな問題意識を持っている政党だと思っていたが、子ども手当にこだわりすぎて、本質を見失っている。子ども手当は子育て世帯支援策であって、子どもを増やす政策ではない。ボタンの掛け違いで単なるバラまきとなった。昨年6月の支給以降、実際の効果の検証もせずに、上積みを決めるのもおかしい。フランスのインセンティブ税制は、子どもが増えると世帯の所得税が加速度的に下がる建てつけになっている。

保育施設はもっと充実させて、女性が働きながら2人目を育てられるような予見可能性を実現すべきだ。

--需要に合うように供給構造を変えるべきという意見もあります。

ミスマッチ、アンマッチというレベルで解決できる状況ではない。絶対量としてギャップが大きすぎる。生産年齢人口が1995年の871
6万人から2055年に4595万人になる。滞在人口増加策でも需要の下げ止まりが精いっぱいだという意見もあるが、少なくとも、こういう動きが見えないと、「経済は縮小していくに決まっている」という見方が変わらない。若い人が守りに入り、企業もこの国の市場の将来を見限っている。やれるだけのことをやって、需要の下げ止まり感を醸成し、悲観的な見通しを変える必要がある。

--金融政策によって、まずデフレを止めよという主張があります。

まったく順番が逆。消費者物価は景気の遅行指数であり、実物経済の反映だ。物価のほうを先に動かすことは無理にやってできないことはないが、大きな弊害を招く。悪性インフレやキャピタルフライトを引き起こす危険性が高い。経済の実態が悪いのに物価が上がるのは、通貨の信用の毀損にほかならない。国債でもリスク資産でも何でも日銀に引き受けさせようというのは、危ない議論だ。

 主要先進国で唯一、デフレに陥っている日本。もう10年以上、抜け出せないままだ。物価が下がるだけでなく、経済全体が縮み志向となり、賃金・雇用も低迷が続く。どうしたらこの「迷宮」からはい出し、不景気風を吹っ飛ばせるのか。「大逆転」の処方箋を探る。 お求めはこちら(Amazon)

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