GAFAが"医療"に参入したら「こんなこと」もできる 「喉の腫れ・肺の音・虫刺され」すべて自宅で診療

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それに、使える状態でデータが出てこないという問題もあります。共通のフォーマットや言語がないため、血圧のデータを提供されたとしても、ファイル形式が違えば使えません。

これが「ベンダーロックイン」と言われるものです。現在、マイナポータルを使って、共通の規格でデータを閲覧できるようにするという試みがはじまってはいます。

データ形式を標準化して、相互運用性を担保したうえで情報を持っておく。たとえば、家庭用血圧計のデータなども、標準化されれば、それを健康アプリの事業者が取得して、アルゴリズムを回し、「あなたは血圧が高いので、このような減塩食品がおすすめですよ」というふうに使えるわけです。

日本のヘルスケアは「セルフケア」が主流に

私は、今後、「セルフケア」の時代に入ると考えています。身に着けたウェアラブルデバイスやスマホなどから、生活習慣に関わるライフログを取得して、行動変容を起こしていくという未来が予想されるのです。

たとえば、たくさん歩けばポイントがもらえるとか、買い物中にお得な健康食品の通知が届くとか……普段の生活の領域に、気づかれないようにそっと介入していくタイプのサービスが浸透してほしいなと思っています。

集めたデータを、どう脳にセンシングさせるのかという技術も考えられます。いま面白いのは、ARの技術です。

ARの見えるコンタクトレンズが開発されて、スーパーで食品を見た瞬間に、自分にとって必要な商品はこれだというのが見えたり、鏡の前で身支度していると、「将来あなたのルックスはこうなる」というものが見えたり……「いまのままの生活を続けると、10年後にはこんなに太りますよ」とか(笑)。

そうなったら面白いですし、効果的だと思います。脳に対する入力は、今後のテーマになっていくでしょう。

ウェアラブルといっても、いまはまだ、健康データは、意識して自分で見なければならないものです。このひと手間をなくせば、さらに楽しいものに仕上がっていく。それが未来のヘルスケアになるのではないでしょうか。

(構成:泉美木蘭)

三木 竜介 医師・リンクアンドコミュニケーションCMO

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みき りゅうすけ / Ryusuke Miki

九州大学医学部卒業後、17年間地域の中核病院で、循環器・救急・集中治療などに従事。2016年に京都大学大学院社会健康医学系専攻に進学し、医療ビッグデータを使った研究などを行う。18年から神戸市でヘルスケアデータ利活用のための情報基盤の整備や、健康創造都市KOBEの都市ブランディング、デジタルヘルスサービス開発などに従事。

21年、6000以上の自治体や企業で導入されているAI健康アプリ「カロママ プラス」を開発・提供するリンクアンドコミュニケーションのCMOに就任。健康データを活用した新たなサービスづくりを行う。

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