「世間の常識」と「経済学の常識」が異なる根本理由 語源から違う「市場原理」主義と「市場」原理主義

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同じ経済現象を捉えるにしても、経済学者が学術的に経済現象を捉える眼と、経済学を知らない人でもありふれた日常生活の中で起こる経済現象を捉える眼とで、違って見えることがある。そんな違いを楽しんでもらいたいという思いで、総合論壇誌「アステイオン 96号」で「経済学の常識、世間の常識」と題した特集を組んだ。

「経済学の常識」が正しいから、それを押し付けようという意図はない。むしろ、「経済学の常識」が世間では非常識になっているのではないか。そうした経済学者の言説を、経済学を知らない人はどう理解すればよいか。この特集は、そこにチャレンジした試みでもある。

「経済学の常識」で捉えなおしてみる

特集を構成する各論考を簡単に紹介したい(掲載順)。

このところ、経済格差が拡大しているという認識が、世界的に広まっている。そこでいう「格差」を捉えるときに、経済力がない「経済的弱者」が生活に窮する状態を何とかして助けたい、という思いがある。では、「経済的弱者」とはどういう状態の人なのか。まず思い浮かべるのは、「低所得者」だろう。

この論点について、「ライフサイクル理論」(人々は現在から将来の状況を考慮して自らの効用(満足度)を最大にするように消費する)という「経済学の常識」に焦点を当てるのは、宇南山卓(京都大学教授)である。「経済的弱者」は、今だけ「低所得者」である人ではなく、生涯を通じて「低所得者」である人であることに気づかされる。

最近、新型コロナの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻によって世界的なサプライチェーンが寸断されたり、資源価格が高騰したりする影響で、ものの値段が上がる傾向にある。「経済学の常識」に基づけば、価格を上げると需要が減る。これを、「需要法則」と呼ぶ。安田洋祐(大阪大学准教授)は、「需要法則」に焦点を当てる。需要法則は、たいていの場合は「世間の常識」ではあるが、意外にそれに反する世間の見方が時折出てきたりするところを紹介している。

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