自分たちで守れ? 台湾有事でも派兵しない米国 日本が安保戦略で「ハシゴ外し」のリスクも

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陳鴻斌は最後に、「ミリーの表明は台湾の蔡英文を失望させるのは間違いない」と述べ、台湾有事でアメリカ軍が派兵し中国と共同で戦うことを期待していた台湾側を失望させたとみる。

確かにウクライナ侵攻からほぼ1カ月後の2022年3月22日、台湾のケーブルテレビ「TVBS」が発表した世論調査では、「両岸で戦争が起きた場合、アメリカは台湾へ派兵し防衛すると信じるか」との質問に、「信じる」がわずか30%と、「信じない」の55%を大幅に下回った。ウクライナでの「代理戦争」に対する台湾人の冷静な反応がうかがえる。

情緒的な台湾政策が持つリスク

岸田文雄首相は2022年5月23日に東京で行われる日米首脳会談で、東シナ海や台湾海峡をめぐる日米の連携強化をウクライナ侵攻と関連付けて、共同文書に明記する方針とされる。

筆者は本欄で、バイデン政権が2月に発表した「インド太平洋戦略」が、台湾問題で「脇役」だった日本を「主役」にする狙いを指摘した。ミリー発言は、日本政府が台湾への情緒的共感に傾斜した対中政策を続けると、アメリカの「ハシゴ外し」に遭いかねないことを警鐘と受け止めるべきだと思う。

岡田 充 ジャーナリスト

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おかだ たかし / Takashi Okada

1972年共同通信社に入社。香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員、論説委員を経て、2008年から22年まで共同通信客員論説委員。著書に「中国と台湾対立と共存の両岸関係」「米中新冷戦の落とし穴」など。「岡田充の海峡両岸論」を連載中。

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