自分たちで守れ? 台湾有事でも派兵しない米国 日本が安保戦略で「ハシゴ外し」のリスクも

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アメリカの台湾有事への基本原則は、中国の武力行使に対応を一切明らかにしない「曖昧戦略」にある。ウクライナへの対応でバイデンが明らかにした「戦略的明確化」とは真逆なのだ。「曖昧戦略」は北京に対しては「一つの中国」政策を維持するとの安心感を与え、他方台北に対しては「武力で台湾を守る」ことを否定しないことで、北京の武力行使を抑止する「二重の効果」があるとされてきた。

しかし、アメリカの識者の中から「曖昧戦略」は北京に誤ったシグナルを送るとして、放棄を求める声が上がり始めた。バイデン自身も就任以来、記者会見などで「台湾を防衛するのか」と問われ「する」と複数回答えたが、その後国務省は「発言撤回」に追われた。またホワイトハウスでアジア政策を統括するカート・キャンベル・インド太平洋調整官も、曖昧戦略の変更を否定する発言をしている。

「代理戦争」によるアメリカのリスク低減

冒頭紹介した陳鴻斌は、ミリーが「台湾を軍事支援する」という表現を使ったことから、「曖昧戦略」を「明確化」へと方針転換したのでは、と踏み込んだ解釈している。ただ、ミリー証言をもって「曖昧戦略」の放棄と結論するのは早計だと思う。台湾防衛を公言することは、核保有国である中国との衝突を覚悟しなければならない。それはバイデン政権にとって極めて重い圧力になるからである。

一方、「代理戦争」について陳鴻斌は「アメリカとNATO(北大西洋条約機構)はウクライナに直接派兵せず、軍事支援と包括的な対ロ制裁という間接的方法によって目標を達成し、ロシアは戦争目標を達成できないでいる」と、「代理戦争」が効果を発揮したとみる。

アメリカ軍の代理戦争への評価の背景として陳は、20年にわたるアフガニスタン戦争でアメリカが2兆ドル以上の戦費をつぎ込み、2300人以上の将兵を犠牲にしたにもかかわらず敗北した「トラウマ」と関係があると指摘する。

ウクライナ戦争でバイデン政権はこれまで、アメリカ議会が承認した136億ドル(約1兆8000億円)に加え、2022年4月末にアメリカ議会に330億ドルの追加予算を求めた。アメリカ政府はこの予算を使って携行型の対戦車ミサイル「ジャベリン」や地対空ミサイル「スティンガー」、自爆攻撃機能があるドローン「スイッチブレード」など最新兵器をウクライナに供与してきた。アメリカ軍産複合体にとって、代理戦争は自国兵士の犠牲というリスクを冒さずに、巨大な利益をうみ出していることがわかる。

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