ジャック・アタリが語る日本の「エネルギー問題」 「欧州の知性」が予測、新冷戦後の地政学リスク

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――エネルギー資源の大部分を海外からの輸入に依存する日本の供給構造は脆弱です。日本はどのようにエネルギーの安定供給を確保すればよいでしょうか。

発想の転換が必要だろう。最良のエネルギー政策は、エネルギーの消費を減らすことにある。日本の課題は、化石エネルギー、さらには他国への依存を減らす社会をつくり出すことだ。

例えば、医療、教育、健全な食などの分野を軸に、情報テクノロジーを活用する社会を構築するしかない。歴史を振り返ると、こうした社会は日本文明の美徳と見事に合致している。

――省エネ対策のヒントはありますか?

さまざまな対策が考えられる。第1に、非物質的な活動を育成することだ。読書、執筆、会話、音楽、絵画、茶道などは、エネルギーを必要としない活動になる。私が「命の経済」に分類する医療、教育、スポーツなどもエネルギー消費量が少ない。これらの活動に消費を誘導していくべきだろう。

最強の外交は「サバイバル精神」

――ウクライナ危機以外に注視すべき地政学リスクはありますか。

例えば、北方領土や台湾の支配をめぐって戦争が勃発するおそれがある。イランをはじめとする中東地域も注視すべきだろう。戦争の脅威以外にも、アフリカでの飢饉や新たな感染症の世界的大流行も警戒する必要がある。

これらの脅威を予測しておくのは、危機を回避して「命の経済」への移行を加速させることにつながる。最悪の事態を頭に入れておけば、最善の策を実行する原動力を見いだすことができる。

――ロシアとの北方領土をめぐる紛争や中国の台湾侵攻が起きた場合、日本は自国の戦力だけで防げるとは思えません。最悪の事態を回避するための、日本の外交戦略のポイントは何でしょうか。

ウクライナがロシア軍の侵攻を食い止めることができると予想した者は誰もいなかったはずだ。軍隊は、国民が自国文明の存続のために命を落とす覚悟があってこそ威力を発揮する。サバイバル精神こそが最強の外交となるだろう。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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