ネット上でクレジットカードの不正利用が急増、世界標準の仕組みの導入を

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不正利用で新たな犯罪も

こうしたカード犯罪によって調達された資金の使途にも強い懸念がある。最近ではボットに代表される不正なプログラムをネット上で簡単にダウンロードして利用できることもあり、米国ではテロ組織の資金源になると考えられている。日本でも犯罪組織の資金源やマネーロンダリングの手法として使われる可能性がIPA(情報処理推進機構)などから報告されている。カード会社のコスト問題に帰してよい問題ではない。

幸いなことに、三井住友カードが11年10月をメドに基準を策定する方向で動き始めた。他社も追随するもようで、カード発行会社が動けば加盟店でも徐々に動きが出始めよう。13年ごろには大手を中心に加盟店への普及が進むとみられる。だが、中小加盟店ではどの程度のスピードで進むのか。

さらに、キャッシングの問題もある。日本のATMのほとんどは、暗証番号の暗号化が行われておらず、生のデータがそのままネットワークを流れていく。これ自体、グローバルスタンダードから外れている。暗号化されていなければVISA、Masterではキャッシングは受け付けない仕組みになっている。国内で利用可能なのはCITIや新生銀行などの外資系金融機関とゆうちょ銀行の一部店舗、セブン銀行などの、ごく限られたATMだけだ。

ATMシステムメーカーによると、暗証番号の暗号化装置は、海外向けにはほぼ標準装備となっているが、国内向けは要望がなければ搭載しないという。日本はクレジットカード利用率30%にも届かない現金大国だ。地方の小規模店舗では非加盟店も多く、現金が必要だ。多額の現金を持ち歩く習慣のない海外からの旅行者にはまことに不便な状況だ。銀聯カードに対応している都心の大手家電量販店などはともかく、金融というインフラを整えて地方の観光地でもカネを使ってもらえなければ、政府が旗を振る「観光立国」も実現しない。

消費者保護、不正資金源化防止、そして観光立国の観点からも、クレジットカードのセキュリティをグローバル標準に高めることは喫緊の課題だ。

(シニアライター:小長洋子 週刊東洋経済2011年2月19日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。写真はイメージです。本文とは関係ありません。
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