フラン急騰パニック、市場不安で日銀に試練 スイス国立銀行のユーロ買い中止の意味は?
そのため、SNBはそれまでの無制限介入に加えて、14年12月にマイナス金利の導入を決定したが、大した効果を得られなかったのである。
1月22日開催のECB理事会で、ECBが量的金融緩和に踏み切ることは、ほぼ確実視されていた。ECBが一段と緩和姿勢を強めれば、さらにユーロ安圧力が高まる。そのためSNBはこれ以上ユーロを買い支えることを断念したと考えられる。
実際にSNBはこれまでのユーロ買い介入により、すでにバランスシートに膨大な外貨準備を抱えている。14年12月時点で5000億フラン(約67兆円)を突破(金などを含む広義ベース)。ユーロはそのうちの4割以上を占めているとみられる。もし設定上限を守るためにユーロを買い続け、最終的にユーロ安を止めきれなくなれば、将来の損失拡大リスクが一層高まる。
過度な金融緩和でバブルの懸念
介入に要する資金は通貨の発行によって賄うため、SNBの直近のマネタリーベースは、名目GDPの約6割に達する(次ページ参照)。この水準は、異次元緩和を進めている日本銀行の56%を上回り、先進国で最大規模だ。大量のマネー供給はバブル発生の温床となり、住宅価格の過熱感が強まっている。SNBとしては、今回の政策変更は苦渋の決断であったといえよう。
ただ、大規模な為替介入を始めたからには、いかにソフトランディングさせるか、いわゆる出口戦略が重要だ。今回は意図していた出口への道が絶たれたことで、市場との事前対話もなく突如終了、大混乱を招いた点で、明らかな失敗だった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら