フラン急騰パニック、市場不安で日銀に試練 スイス国立銀行のユーロ買い中止の意味は?

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SNBに対して、オメガなどスイス製の腕時計などを販売する世界最大手のスウォッチグループのニック・ハイエク最高経営責任者は、「輸出産業、観光業、最終的には国全体を襲う津波だ」と怒りの声明を発表。また、海外のFX(外国為替証拠金取引)業者のいくつかが資金繰りに行き詰まって、破綻した。

SNBの無制限介入と日銀の異次元緩和では、購入資産が異なるため同列に論じることはできないが、大規模な量的金融緩和を実施している点では共通している。そして、日銀のマネタリーベースのGDP比はまもなく、SNBを抜き去ることになる。

日銀の出口戦略に不安

日銀は「出口戦略を語るのは時期尚早」とのスタンスを取る。だが、ハードランディングに終わったSNBの失敗は、金融政策を変更することの難しさを突き付けた。

順調な米国経済は世界景気の支えとなっている。しかし、15年半ばとも予想されている米国の利上げが開始されれば、経常赤字国の通貨急落につながる可能性がある。

さらに世界経済の減速を背景とした原油などの資源価格の下落も、財政収入の多くを資源売却に頼るロシアなどの新興国にダメージを与える。こうした不安定な要素が潜在する中、日銀は難しい舵取りを迫られそうだ。

「週刊東洋経済」2015年1月31日号<26日発売>「核心リポート01」を転載)

上野 剛志 ニッセイ基礎研究所 上席エコノミスト

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うえの つよし / Tsuyoshi Ueno

京都大学経済学部卒業後、1998年に日本生命保険相互会社入社。企業融資審査業務に携わる。その後、日本経済研究センター、米シンクタンクThe Conference Boardへの派遣を経て、2009年よりニッセイ基礎研究所へ。内外経済の動向を踏まえ、為替をはじめ、金利、金融政策、コモディティなどを幅広く分析している。岐阜県出身。

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