株価の乱高下はそろそろ終了に向かうと読むワケ 主要国の株価は年末に向けて次第に上昇へ

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それでも、長期的な流れを考えれば、世界市場のドタバタ騒ぎは次第に沈静化し、主要国の株価は年末に向けての上昇基調に一歩ずつ踏み出していくと見込んでいる。

アメリカ市場におけるドタバタのネタは、インフレ懸念やそれによる金融引き締めの加速観測、それらを受けた長期金利の上昇などであった。インフレ懸念は根強いが、原油の指標であるWTI原油先物価格は1バレル=130ドル超の高騰を3月上旬に演じたあと、120ドルを超えることなく推移している。

諸産業で幅広く使われる銅先物も、足元で軟化を見せている(その背景には、中国経済の減速懸念があり、株価への影響という点では手放しでは楽観できないが)。また、金融政策の大きなイベントであった5月のFOMCは通過し、6月以降も0.5%ずつの利上げにとどめる方針が示唆されたことから、将来の金融政策の不透明感は限定的なはずだ。

企業業績予想も改善、主要国の株価は次第に上昇軌道へ

一方、主要国の企業収益動向も、とくにアメリカのIT超大手企業について、市場波乱のネタとされた。4月29日のアマゾン・ドット・コムの株価急落は、市場全体にも影を落とした。だが、1~3月期の決算発表を過ぎて、決算発表に伴う投資家の様子見姿勢は峠を越しただろう。

日本では今週が決算発表のピークだ。しかも、日本企業は自社の収益見通しを過度に慎重に見積もるのが「お家芸」のため、しばらくそれに引きずられて国内株価の上値が重くなることはありそうだ。ただし、そうした収益見通しに対する警戒感も、決算発表とともに当面は一巡すると見込む。

そもそも「日米ともに企業収益が懸念していたほど悪くない」との声は、アナリストたちから聞こえてくる。

アメリカのファクトセット社が集計するアナリスト予想値の平均値で、EPS(1株当たり利益)の前年比は、S&P500指数ベースでは、昨年末の時点で、2022年1~3月期について6.0%増益が見込まれていた。しかし決算が発表されてみると、9.0%増益で着地している。

そのため、2022年の年間業績についても、昨年末時点では7.4%増益見通しであったものが、先週末においては10.0%増益予想に上方修正されている。日本企業についても、同様にTOPIX(旧東証1部上場企業ベース)で見ると、2022年の年間業績見通し(四半期ごとに切り分けて、再合計して暦年に換算したもの)は、昨年末時点でアナリスト予想の集計値で8.6%増益であったが、先週末においては12.9%増益への上方修正となっている。

アメリカ株の先週の上下動の背景に、ポジションの投げがあるとの推察を述べたが、そうした整理売り・整理買いも、そうそう長続きするものではない。

世界市場の動揺が徐々に沈静化し、投資家心理も落ち着いて冷静に経済や企業収益の実態を見つめるようになることで、日米など主要国の株価はじわりじわりと長期上昇軌道に沿った色合いを強めていきそうだ。

(当記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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