就活生の志望度を下げる「時代錯誤がひどい面接」 採用する側にも「態度が悪い」問題担当者がいる

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人事は面接以外にも注意を払う必要がある。口コミサイトが学生の志望度を大きな影響を与えている。もし「ブラック」と書き込まれたら、学生の志望度は大きく減じる。

口コミサイトは昔から存在し、採用担当者はその内容を気にしてきたが、影響力は以前よりはるかに強力になっている。学生は就活サイトでの業種・企業研究と並行して口コミサイトで裏情報をチェックしている。
最も気にしているのはブラックか否かだ。新卒の口コミサイトだけでなく、「OpenWork」のような社会人向けの口コミサイトも調べている。

「OpenWorkなどの社員の口コミを見て、説明会の内容と実態が乖離している場合は志望度が下がり、大抵は選考辞退するケースが多かった」(理系・上位私立大)

「給料が高く、休みもあると書かれていた企業が口コミでブラック企業と言われていたこと」(文系・中堅私立大)

口コミ通りにブラックな企業もあるし、事実に反するいい加減な書き込みも多い。どちらであっても鵜呑みにする学生が多いから、口コミサイト対策は容易ではない。

すぐに「ブラック判定」可能性

口コミを黙殺すれば、「やはりブラック」なのかと思われる。その一方で「確かに正直言って大変だよ」と学生に寄り添うつもりで説明しても、ブラック判定される可能性がある。

たとえばこんなコメントがある。

「残業時間が少ないと言っていた企業で、時間外の会議が普通にあるときいて不安になった」(理系・旧帝大クラス)

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このコメントを読んでわたしはいささか驚いた。潔癖感が強すぎるし、こんなことで不安になる心性がひ弱に思える。

すべての学生ではないはずだが、自分の価値観を信じ込み、思い込み通りの職場で働きたいと考える学生が増えているように感じる。価値観の中心にあるのがブラック忌避、つまり残業を嫌う心性だ。

「ブラック」という言葉は昔からあったが、現在のような「過労死」に至るまでの残業という意味合いは、2015年の過労自殺事件から強まったと思う。Webには「電通東大卒女性社員自殺」と書かれている。「電通」「東大」だけならそれほど驚かないが、「新入女子社員」の自殺になると穏やかではない。大きな事件として報道された。

ただ、学生たちのコメントを読むと、「ブラック」「残業」「時間外」という言葉は頻出するが抽象的で、具体性を欠いている。経験したことがないのだから当たり前だ。未経験のことなのに労働環境に言及するコメントは多い。「増大」と言うより「蔓延」という形容がふさわしく、読んでいると頭でっかちに感じる。

コロナ禍によってリアルな学生生活がなくなり、人と話すことの少ない巣ごもり生活をしていた影響もあるのかもしれない。コロナ禍に学生生活を送った2021年卒、2022年卒、そして2023年卒の社員には特性があると思うが、たぶんもう少し経ってから明らかになっていくのだろう。

佃 光博 HR総研ライター

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つくだ みつひろ / Mitsuhiro Tsukuda

編集プロダクション ビー・イー・シー代表取締役。HR総研(ProFuture)ライター。早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。1984年同社退社。 多くの採用ツール、ホームページ製作を手がけ、とくに理系メディアを得意とする。

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