JR西「人型ロボ」実用化に挑む3人の社長が描く夢 量産化や他業界への展開、「下半身」も開発中

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「人型ロボ」と3人の社長。左から日本信号の塚本英彦氏、JR西日本の長谷川一明氏、ロボット「零式人機ver.2.0」、人機一体の金岡博士氏(記者撮影)
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JR西日本が日本信号やロボットベンチャー企業の人機一体と共同開発する多機能型の鉄道作業用重機が実用化に向けて大きく前進した。「人型重機ロボットと鉄道工事用車両を融合した多機能鉄道重機を開発し、2024年春に営業線での導入を目指す」――。4月15日、都内で開催された記者会見で長谷川一明社長が高らかに宣言した。

人間に代わって人型重機ロボットがクレーン車の先端に搭載され、作業を行う。高所作業を人が行う場合、高所で作業する人のほか、クレーン車の操縦者、補助スタッフなど合計で3〜4人が必要となる。しかし、高所作業をロボットに代替させればクレーンとロボットを操縦するスタッフと目視確認を行うスタッフの2人くらいで十分だ。「作業員の数を約3割減らせる」と長谷川社長は期待する。

ロボットで「労災ゼロ」目指す

記者会見では屋外の線路上で行われた試作機による実証実験のもようが公開された。人型ロボット「零式人機ver.2.0」は重さ約30kgの部品を抱えたままクレーンで高く持ち上げられると、取り付け位置を確認し、架線に部品を据え付けた。高所での塗装作業のほか、列車運行の障害となる木々の伐採にも使える。長谷川社長は「なるべく多くの作業に使いたい」と意気込む。

ロボットを操作する仕組みはまさにSFの世界だ。操縦席に座った作業員の操作とロボットの動きが連動し、ロボットが触れた物体の重みや何かにぶつかったときの反動は操縦者にフィードバックされる。直感的な操作が可能となり、技術の習得が容易だという。「操作方法は20〜30分で習得できた」と、屋外作業に立ち会ったJR西日本の担当者が話す。

省人化による生産性向上と同時に長谷川社長は労働災害の減少にも期待する。高所での架線保守作業は墜落や感電といった危険と隣り合わせ。ロボットに置き換えることで「労働災害ゼロ」を目指す。

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