在宅は出世に影響?近くにいるほど「高評価」の謎 日本人の有休消化率はなぜこれほど悪いのか
結果をみると、「休むと職場の他の人に迷惑になるから」「職場の周囲の人が取らないので年休が取りにくいから」「上司がいい顔をしないから」という回答が上位にあがっている。また同機構が2005年に実施した調査(「働き方の現状と意識に関するアンケート調査」では所定労働時間を超えて働く理由について聞いているが、10.3%の人が「上司や仲間が残業しているので、先に帰りづらいから」と回答している。いわゆる「つきあい残業」である。
注目してほしいのは、わが国では有給休暇を残しても買い取られないし、時間外労働賃金の割増率も欧米に比べて低い(欧米など海外ではおおむね50%以上であるのに対し、わが国では25%以上)ということである。さらに手当が支払われない「サービス残業」が半ば公然と行われているのも周知の事実である。
「労働を献上する」ことで承認を得る
いったいなぜ、日本人の働き方はこうなるのか。そもそも経済学の常識では、人間は金銭的利益が最大限になるよう効率的に行動するものであり、残った有給休暇を買い取ってもらえないなら、権利としてすべて余さず取得するはずなのだ。時間外労働をしても大して割り増しがないどころか、サービス残業扱いでタダ働きなら残業などしなくて当然だろう。
ところが多くの日本人は強制されなくても休暇を残し、当たり前のように残業をする。彼らは休暇を残し、少ない手当か無給で残業することで会社に自らの労働を献上する。ただ、それは純粋な愛社精神や勤勉さの表れなどではなく、見返りに会社や上司・同僚から承認を得ようとしていると考えられる。
金銭の代わりに承認を受け取っているという見方もできる。実際、いくら仕事ができても休暇をめいっぱい取得し、まったく残業をしない人は奇異な目で見られたり、陰口をたたかれたりすることがある。人事評価に響く可能性もある。
それだけ共同体のメンバーにとって、共同体のなかで承認されること(あるいは承認を失わないこと)が重要なわけである。
このような視点から考えても、超過的な貢献や忠誠心をアピールしづらいテレワークや裁量労働制、ワーケーションなどが思うように普及しないのは納得がいく(全社員いっせいに導入するなら話は別だが)。
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