米国の「共働き夫婦の凄さ」を日本人は知らない 経済大国のパワーカップルは「考え方」が違う

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潤さん「同じ病院なので、お互いの勤務時間がわかるんです。僕は専門上、シフト制で、当直がある勤務形態です。オンとオフが比較的はっきりしています。一方、妻の奈央のほうは常に毎日仕事に行く働き方です。お互いに働き方が違うので、家のことの分担がしやすいんですね」

日米で大きく違う医師の働き方

相手の状況を理解・把握できるとはいえ、共働きでの子育てが非常に難しいのは事実だろう。それを可能にしているのは、日本とアメリカの労働環境の違いにあるようだ。

奈央さん「一番大きなポイントは、日本の医師に比べてアメリカの医師の労働時間が圧倒的に短いことだと思います。共働きでもやっていける理由はそこじゃないかな」

潤さん「日本の病院は医師と看護師が基本的なスタッフで、あとは事務や薬剤師のスタッフがいると思います。一方、アメリカはそれら以外にもいっぱいいて、たとえば理学療法士や作業療法士、呼吸療法認定士など。

もちろんこれらの職業は、日本でも存在していますが、アメリカのほうが圧倒的に数が多くてさらに細分化されていて、医者がやらなきゃいけない仕事量が少ないんです。その分、専門性が高いという違いはあると思いますけどね」

奈央さん「そのぶん、アメリカは医療費も高額で、医療がビジネスとして成立しているとも言えるわけですが……」

医師という仕事に対する考え方の違いがうかがえるが、その一方で、労働に対する、日米での考え方の違いも影響しているという。

奈央さん「アメリカでは『ダラダラ働かない』が基本なので、たとえば、17時以降は当直の人にすべて任せる。当直でもないのに夜にいると『なんでいるの?』『自分のことを信頼してないの?』という雰囲気になるんですよ。仮に残って仕事していても、当直の人に気を使って口出ししない。気遣いの仕方が日本とは違うんじゃないでしょうか」

病棟と外来どちらの仕事もする奈央さんだが、患者の状況によって業務がコントロールされており、16〜17時には外来から人がいなくなるようになっているという。これにより夜遅くまで働くことが絶対にないため、家庭にもコミットできる時間を確保できるようだ。

さて、本連載では「仕事と家事・育児の両立」について毎回尋ねているが、日本とアメリカでは、子育て事情にも大きな違いがあるようだ。

奈央さん「ある一定の収入がある人は、アウトソーシングで家事代行やナニーを雇うのが普通なんです。奥さんが専業主婦の家庭でも、フルタイムでナニーを雇ったりとかお掃除する人を雇ったりとか」

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