築堤活用も開発の鍵、JR東「高輪ゲートウェイ」 すべて解体せず一部保存、街のストーリーに

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新橋―横浜間の鉄道敷設に関しては、陸地は国防の要という理由から兵部省(軍事を担当する中央官庁)が陸上の用地を提供せず、海上に築堤を建造してその上に鉄道を走らせるという方法が取られた。イギリス人技師、エドモンド・モレルの指導のもと、全長2.7kmの築堤が新橋―横浜間開業直前の9月に完成した。日本の伝統的な工法と西洋技術の折衷で建設され、現場がある港区の教育委員会は「世界史上も極めて重要な近代化遺産」として高く評価する。

高輪築堤より東側の芝浦・港南地区は明治から昭和にかけて埋め立てられた土地である。そこに鉄道の車両基地が設置され、高輪築堤も埋没した。そして鉄道輸送需要の増加に伴い車両の拡充が繰り返され、いつしか高輪築堤の正確な位置もわからなくなっていた。

JR東日本は2020年8月、高輪築堤の発見を当局に届け出た。そして9月から谷川章雄早稲田大学教授を委員長とする委員会を立ち上げ、調査や保存方法についての検討を始めた。

過去から未来へ、時間軸をストーリーに

「高輪は明治時代の文明開花のシンボルともいうべき鉄道が始まった場所。新しい開発の地に高輪築堤が忽然と現れたのは運命的。偶然ではない」と内田氏が言う。偶然どころか、JR東日本にとっては、むしろ必然ともいえた。

高輪築堤を現地保存する部分の模型。築堤の実際の公開方法は検討中(記者撮影)

開発プロジェクトがスタートした当初は、羽田空港に近く、将来のリニア中央新幹線駅となる品川に近いことから「新たな国際交流拠点の形成」と位置付け、「次世代ビジネスモデル実現のための場を提供する」というコンセプトであった。そこに高輪築堤が発見され、歴史という要素が加わった。

首都東京から築堤を経て行き着く横浜は、明治期の日本における世界への玄関口だった。過去から未来につながる時間軸がストーリーのように打ち出されたのだ。

信号機跡部分の築堤(記者撮影)

発見された築堤は全長800m。全面保存を訴える声もあったが、すでに道路整備が完了しているなど設計変更が難しい箇所もあり、2021年4月に検討委員会は80mと40m、計120mの部分を現地保存するとともに、信号機跡を含む長さ30mの部分は近隣に移設する方針を取りまとめた。

さらに、築堤の一部は鉄道開業を主導した大隈重信の故郷である佐賀に移設され、2022年4月から県立博物館で公開が始まった。鉄道文化への理解者を全国で増やすという意味で有効だろう。

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