出世から性愛まで「古代中国人」の驚きの日常生活 「キングダム」が100倍面白くなる研究の最前線

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ーー古代中国人がキスをする習慣があったことも、明器からわかりました。

シンプルに感動した。古代でもキスをしたんだ、と。木簡からは、ディープキスをすることもわかっている。

ーー当時の性愛についても切り込んでいます。

キスの場面をモチーフとした漢代の明記(写真:四川省瀘州市合江県漢墓出土陶俑。索徳浩『四川漢代陶俑与漢代社会』所収)

春秋戦国時代の史料からは、かなり赤裸々な性愛に関する記述が見つかる。その後、秦漢時代になると儒教が普及することで性愛に対して抑圧的なムードになり、記述は激減する。その後は(退廃的な文化の)貴族の時代が到来し、再び赤裸々な記述が出てくるようになる。両者をつなげば秦漢時代のこともある程度は復元できる。

さらに、道教では性行為により寿命が延びると考えられていたので、宗教書から非常に詳細な記述を見つけることができる。

もっとも、書籍で描いたのはあくまで僕という男性の目線によるもの。古代中国史は女性史の研究があまり進んでいないこともあり、視点に偏りがあることは重々承知している。だからあえて、著書では僕という男性が古代中国にワープして24時間を体験する、という書き方をしている。

「男性目線」が見落としていたもの

――筆者として、神の視点は持ち得ない、と。

持てないんです。もっとも、大学の授業での学生とのコミュニケーションを通じて、ブラッシュアップできた部分はある。

授業をやるたびに、出席カードの裏に「(古代中国の日常について)どんなことでもいいから質問や意見を書いてください」と。そして、もらった質問を次の授業までに調べて、みんなの前で答える。これを10年くらい続けたことで、次第に穴が埋まっていった。

調べてもどうしてもわからなかったのは、生理のこと。女子学生から「生理のとき、女性はどうしていたのか」と質問をされたが、文献史料の筆者はそもそも男性なので、記述に出てきにくい。

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