出世から性愛まで「古代中国人」の驚きの日常生活 「キングダム」が100倍面白くなる研究の最前線

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柿沼教授は、漢文の文献史料や出土した副葬品などを使って、古代中国人の日常生活を復元している(撮影:尾形文繁)
東洋経済オンラインでは、期間限定で大人気漫画『キングダム』の序章となる1話〜30話(コミック第3巻まで)を無料で公開中だ。2000年以上前の中国で縦横無尽の活躍を見せるキャラクターのなかには、後に始皇帝となる若き王・嬴政(えいせい)など実在の人物も含まれる。
当時の中国人は、何時から働き、家の中はどんなニオイがし、恋人たちはどのように愛し合っていたのだろうか。こうした疑問を明らかにしたのが、『古代中国の24時間』(中公新書)の著者である早稲田大学の柿沼陽平教授だ。
10年以上かけて漢文の史料を読み込み、明らかになってきた古代中国の日常生活とは。最新の研究結果を知ることで、『キングダム』の世界がぐっと身近に感じられる。

ーー『キングダム』、『三国志』、『レッドクリフ』など、古代中国をテーマにした作品は時代を問わず人気があります。

本書が出てから、漫画やドラマの時代考証の依頼がびっくりするほど沢山来ている。それだけ、古代中国の日常生活を網羅的に研究している人がこれまでいなかったということ。

たとえば、ある作品のワンシーンで官吏が朝起床する。では、当時の役人は朝何時に起きていたのか、その論拠は何か、と聞かれても、ほとんどの研究者が即答できなかったのではないか。

それが、今回の研究でわかってきた。役所の重要な会議は朝5時頃から始まるから、官吏は非常に早起きをする。一方、会議がない日は昼まで寝ているときもある。

将軍の「お給料はいくら」から始まった研究

ーー古代中国の貨幣、経済史が専門ですが、なぜ日常史に関心を?

日常史の研究を始めたのは、まだ20代後半のころ。下世話な話だが、貨幣の研究をしていてふと「古代中国の将軍たちって、給料はいくらなんだろう?」と疑問が生じた。

そんなとき、学会に出席するために訪れたヨーロッパで出会ったのが、ジャーナリストのアルベルト・アンジェラが書いた『古代ローマ人の24時間』という本。これは面白い、と原書で読んだ。

では、自分は古代中国人の24時間を描けるだろうかーー。そう自問自答してみたところ、朝何時に起きて、夜何時に寝ているかすら答えられない。そこから本格的に史料に当たり始めた。

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