東ティモール、ホルタ大統領再登板後に待つ課題 独立回復20周年、混迷の歴史から見えてくる
このようなグスマンの決断は、世代交代を促す一方で、フレテリンとCNRTとの長年の対立を乗り越える大同団結として国民に広く受け入れられた。多くの国民の喫緊の願望は経済発展であり、総人口の中心を担っていく若い世代にとっては雇用の確保であった。グスマンは2011年に中長期開発計画「戦略開発計画」(SDP)を発表した。
このような政治状況のもとで、2017年大統領選挙ではCNRT独自の候補者を出さず、ル・オロを推薦したことで決選投票もなく決まったのである。しかしながら、直後の国民議会選挙でフレテリンがCNRTを1議席上回る第1党の地位を獲得したことから混迷が始まる。当然ながら誰もがアルカティリとグスマンとの蜜月関係を前提にルイ・アラウジョが続投する第7次立憲政府を予期していたが、実際はアルカティリ自身が首相に返り咲いたのである。
世代交代が頓挫するとともに、グスマンとアルカティリの関係そのものが破綻することになった。大統領に就任したル・オロはアルカティリを首班に指名したのだ。その後の東ティモールの政局は混乱を極め、CNRTらの野党連合の結束で国家予算は議会を通らず、ル・オロは憲法100条の解散要件に基づき、2018年1月に国民議会の解散を発表した。ここに、今回の大統領選挙後には国民議会選挙がなく、2023年へと1年ずれることになった背景がある。
これ以降の詳細な政局の流れは省くが、今回の大統領選挙は当初から現職のル・オロとホルタの一騎討ちであり、「遺恨試合」の様相を呈していた。いずれにせよ、この間の政局混乱の決着としてグスマン主導のCNRTの勝利であったと言えよう。ただ、ホルタ大統領のもと、議会はフレテリンが与党である現在の捻れが今後どのような新たな政局を生み出すかは予断を許さない。
大統領選挙後に直面する東ティモールが抱える諸課題
まずは、再三述べてきたように依然として世代交代の問題に直面している。東ティモールでは17歳以上に選挙権があるが、有権者年齢の中央値は21歳を割り、新たに75,237名(8.8%)が選挙権を得ている。東ティモールの民主主義における若い世代の影響は群を抜き、若者の動向が今後の最大の政治課題になっていくことは想像に難くない。
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