東ティモール、ホルタ大統領再登板後に待つ課題 独立回復20周年、混迷の歴史から見えてくる
依然として東ティモール経済は、ティモール海における油田・ガス田から得られるロイヤルティ収入に依存しており、主要産業が育たない中で、若者の不満は鬱積している。常設仲裁裁判所の判決で、オーストラリアとの領海問題は東ティモール側の有利な主張が認められた。
とはいえ、新たな油田・ガス田であるグレート・サンライズをめぐって、東ティモール側にパイプラインを引くのか、従来通りオーストラリア側に引くのか、グスマンとジョイント・ベンチャー側との主張の隔たりは大きく、SDPが描く石油関連産業による雇用創出の展望は開けていない。
日本が行ってきたガバナンス支援
日本は東ティモール独立回復前後に自衛隊施設部隊を国連暫定行政機構や国連支援団に派遣し、その後も文民警察、軍事連絡要員、筆者も参加した国際選挙監視団の派遣などを通じて同国のガバナンス支援を行ってきた。またJICA支援や青年海外協力隊員の派遣、民間レベルでもNGOが社会サービスの支援を実施することで国家建設に寄与してきた。
経済支援でも2011年から2019年までの二国間政府開発援助総額で、オーストラリアに次ぐ支援国となっている。他方で、中国の存在感は増大しており、日常生活に関わる物品から大統領府や防衛省の建物、道路建設などのインフラ整備へと広がり、確実に一帯一路構想、特に海のシルクロードへの取り込みが強まっている。
しかしながら、東ティモールは小国でありながらも、脆弱国家間のネットワーク「g7+」の指導的立場にもおり、グスマンらが強く訴える「敵国もつくらないし、同盟国にもならない」という外交戦略は貫かれていくと思われる。ASEAN加盟も間近に迫り、欧米の民間機関による民主主義指数の評価も高い。直近の課題として日本には、まずは雇用支援の一環として東ティモールからの技能実習生や高度専門職での受け入れの検討を促したい。
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