「アリア量産車」の出来栄えに見た日産BEVの本気 リーフの経験が生きる「チューニングの妙」

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リーフの場合、季節や天候によって「充電中の電気の入り具合いに差がある」とか、「航続距離が思ったより延びなかった」という声が、市場からあがっている。

こうしたカタログ電費と実電費との差については、BEVの商品特性として「販売店からユーザーにさまざまな事例を想定して丁寧に説明するべき」ということが、BEV販売の大前提とされてきた。 

充電や航続距離といった使い勝手がBEV購入のハードルとなっている(写真:日産自動車)

技術的な説明としては、液状リチウムイオン電池の場合、適正とされる温度は摂氏25度前後であり、その温度調整をいかに行うかが課題だ。

そうした課題を解決するため、アリアではバッテリーパックのヒーターから温水を、またクーリングユニットから冷却水をバッテリーパックに送る温度調整システムを採用した。このシステムにより、日産は「長距離の高速走行時や、極寒の場所での充電ストレスを解消した」と説明する。

また、各方面からの情報を総合すると、アリアで使用する電池セルは、中国のCATL製の3元系の角型リチウムイオン電池を採用しているようだ。リーフ用のエンビジョンAESC製のラミネート型(パウチ型)リチウムイオン電池とは違う。

こうした電池セルの特性と、これまでリーフで得た電池管理データを融合したことで、アリアではリーフに比べてより安定した充電性能を実現したといえるだろう。

バッテリーのリユース/リサイクル

筆者は2022年1月、バッテリーのリユースやリサイクルについて取材するため、日産と住友商事の合弁企業「フォーアールエナジー」の浪江事業所(福島県浪江町)を訪れている。

ここでは、日産のBEV用リチウムイオンのリユース/リサイクルを行っており、リーフ用電池の再生ビジネスの現状を取材した。

バッテリーリユース・リサイクルの現場。フォーアールエナジーにて(筆者撮影)

今後は、アリア用電池パックについても、市場での使用環境でのデータが徐々に蓄積され、日産としてリユース/リサイクル事業の幅を広げていくことになるのだろう。

アリアが、さまざまな面でBEVの本格普及期に向けた世界自動車産業界における中核モデルとなることは、間違いない。2022年夏以降に市場導入予定の、B9やe-4ORCEの試乗機会を楽しみに待ちたい。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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