「アリア量産車」の出来栄えに見た日産BEVの本気 リーフの経験が生きる「チューニングの妙」

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車内に入ると、日産グローバル本社の展示車に座ったときと、なんとなく車外の見え方や室内空間の感じ方が違うように思えた。

展示物としての動くことがない造形物と、これから実際に“さあ走り出そう”とする気持ちで捉えるクルマとでは、人間としての感じ方が違うのかもしれない。具体的に言えば、前方視界の見切りがより良く感じた。

また、開発総責任者でチーフビークルエンジニアの中嶋光氏が試乗前のプレゼンで強調した、「ラウンジのような車内空間」という表現が、筆者の中で腑に落ちた。あくまでも、ラウンジではなく、“ラウンジのような”なのである。

アリアの商品説明をする、チーフビークルエンジニアの中嶋光氏(筆者撮影)

移動しないラウンジのそのものを車内デザインとして再現してしまうと、クルマとの相性はよくないだろう。“さあ走り出そう”という気構えで感じる、“ラウンジのような”空間が、とても心地よいのだ。こうした感覚は、競合他社の各種BEVとは、明らかに違う。

スッキリした「走りの質感」の高さ

アリアには4つのパワートレインが用意されている。搭載バッテリー容量は66kWh(B6)と91kWh(B9)の2つ、また駆動方式は前輪駆動と4輪駆動(e-4ORCE)の2つがあり、それぞれの組み合わせで合計4パターンとなる。

今回の試乗車は、B6の前輪駆動モデル(最大出力160kW、満充電での航続距離470km)だ。

「アリア」のパワーユニット(筆者撮影)

走り出して、最初に感じたのは「スッキリ感」だった。外観からは、もう少しガツンとした重たい走りをイメージするが、実際にはそうではなく、取り回し性もとてもよい。このスッキリ感については、bZ4Xやソルテラでも同じように体感できるのだが、スッキリ感の種類が違う。

サスペンションのセッティングや、モーター出力・トルク制御、ボディ剛性を出す方法論など、メーカーによってBEVの“走りの味付け方”には、それぞれ特徴がある。

その中で、日産は「リーフ」を10年以上にわたり、世界各国で累計約50万台を販売してきた実績があるため、次世代BEV開発に対する技術者の“肌感覚”が違うのだと思う。“チューニングの妙”が、そこにある。

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