リアス式海岸走る「コミュニティバス」の利便性 スーパーを交通拠点として活用・釜石市南部編

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停まったのは、ちょっと場違いな感じもする高層住宅の前だ。震災復興住宅で、バス停は2階にある玄関前に置かれていた。館内のエレベーターを使えば急坂を上り下りせずともバスに乗れるらしく、交通センターの役割も果たしているようだ。この先、さらに県道を7kmほど進むと午前中に訪れた佐須に抜けられるが、途中、民家はなく、大石行きバスも花露辺で折り返し、国道へ戻る。

次のトンネルを抜けると唐丹の集落に入る。唐丹駅はさらに南へ下った町外れだ。もう一度、トンネルを抜けると三陸鉄道の橋梁が被害を受けた荒川で、ここで大石へ通じる、狭隘な県道へと再び左折。国道の鍬台トンネルが1970年に開通するまでは、こちらが国道45号であったそうで、かつての劣悪な道路条件を知る。国鉄の三陸縦貫鉄道建設が切望された事情も察せられる。

その県道の途中、分岐点が現れると大石への入口。急坂を降りはじめる。しかし海岸まで降りきらないうちに、崖から突き出したようなバスの折り返し場が現れて終点。200円払って下車する。運転士は巧みに切り返しを行って、上平田への出発を待つ。バス路線再編までは、ここまで岩手県交通のバスが入っていた。

16時台が最終のバス

大石14時20分発で戻り、唐丹駅から三陸鉄道で釜石へ。まだ日があるので、新浜町への路線で締めくくる。

三陸鉄道の唐丹駅(筆者撮影)
新浜町バス停(筆者撮影)

上大畑―東前間を1時間ごとに走っている岩手県交通の釜石市内系統のうち、3往復だけ先の新浜町まで足を伸ばしている。上平田からの上大畑行きだと、釜石市役所前で降りればこの系統に乗り継げ、釜石湾沿いに進むことになるのだ。

釜石駅前16時15分発が新浜町行き最終。朝夕の通勤通学時間帯には走っておらず、存在意義は何なのかと思う。市街地の東の外れの東前から先は、事業所が山裾の狭い敷地に立ち並んでいるだけの地区を走る。海側は防潮堤。釜石駅前からは11分で、わずかな民家があるだけの新浜町に着いた。この先は、住む人もいないようである。

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土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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