リアス式海岸走る「コミュニティバス」の利便性 スーパーを交通拠点として活用・釜石市南部編

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久慈行きは8時50分に平田(へいた)に到着。上平田バス停は駅近くのスーパーマーケット「みずかみ」の側にあるとのこと。10分しかないので急ぎ足で向かう。国道沿いにバス停のポールが見えたが、これは池袋と釜石を結ぶ夜行高速バス「けせんライナー」の乗り場だ。あわてて見回すとスーパーの駐車場内に待合室らしき建物が見え、場所がはっきりした。

三陸鉄道の平田駅(筆者撮影)

事前に仕入れた予備知識では、釜石市内のバス路線は2019年6月1日に再編され、釜石市中心部から上平田や、北部の大槌方面へ向かう系統は幹線と位置づけられ、引き続き岩手県交通が運行。そして上平田と鵜住居駅で、支線となるコミュニティバスとの乗り継ぎとなるダイヤに変わっていた。

スーパーマーケットを交通拠点とする方法は、地元住民の生活パターンからすれば理にかなっている。ただ待合室はスーパーマーケット本体と駐車場を挟んだ反対側に設けられていて、バスの運転には都合がいいが、出入口直結とはなっていない。

半島の険路を走るバス

佐須行きのにこにこバスは、地元のタクシー会社へ委託されたワゴン車での運行だった。大石方面行きと愛称が違うのは、2020年3月末までは予約制だったからと判明。車体には予約用の電話番号がまだ書かれていた。今は定期運行で自由に乗降でき、上平田―佐須間に平日のみ4往復が走る。朝の1本のみ、釜石市役所や釜石駅に近い商業エリアにある教育センターまで直通している。上平田―佐須間は片道200円。

佐須で発車を待つにこにこバス(筆者撮影)

佐須行きは発車すると平田の復興住宅に立ち寄ってから東へ向かい、尾崎半島へ入る。直線などほとんどない険路で、しかもアップダウンがかなり激しい。これでは年配者が自家用車で往来するのは厳しかろう。湾の向こう側には、釜石の名所である大観音がチラチラと見える。

同じ地名が多いので半島名を冠した北側の尾崎白浜の漁港へ立ち寄ってから、南側にある佐須へ9時29分に到着。やはり海からかなり離れた集落の中にバス停があり、海岸側には空き地。真新しい防潮堤が海と陸地を仕切っている、これまで何度も見た風景がある。津波は、バス停がある集会所辺りまで谷を遡ったという。

佐須9時40分発で戻る。町へ出かけるのに便利な時間帯となり、佐須や尾崎白浜などから計6人が乗り込んできて盛況。そして上平田で降りる時、皆さん「免許返納」と運転士に告げ100円だけ払う。各地で見られる運転免許証を返納した高齢者への割引だが、運用されている例を見た記憶はあまりない。やはりここでは往来の厳しさがあると実感できた。

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