国境「引き間違え」で生まれた国の辿った歴史の妙 人が引く線であり移ろいやすく永遠不変ではない

今の世界地図も思わぬ形で変わってもおかしくありません(画像:『世界滅亡国家史』サンマーク出版、以下同)
国と国の境目を示す「国境線」。国家の領土、主権が及ぶ範囲ですから厳密に引かれていると思いきや、国境線はしばしば間違って引かれることも。それどころか、引き間違えた結果どこにも属さない空白地ができ、新しい国が生まれた史実が存在します。ギデオン・デフォー著『世界滅亡国家史』より、国境線の「引きミス」をめぐる歴史を紹介します。国境のイメージが変わるかもしれません。
国境線を引く方法は様々ですが、山脈や河川といった自然物を境にするのは比較的ポピュラーな手法です。しかし、15世紀のイタリアで、川を国境にした結果、想定外に新しい国(「コスパイア共和国」)ができた史実があります。

時のローマ教皇エウゲニウス4世は、何年にもわたる醜い教会政治、汚職とえこひいきに対する告発、そもそも誰が正当なローマ教皇なのかについての相反する主張が収まらない、難しい状況に立たされていました。多くのカトリック教会の指導者たちは「それは公会議にかける問題でしょう」という謳い文句ばかりを口にする始末。これは、教皇ではなく、公会議の専門家たちの責任に帰すべきだという責任逃れに他なりません。
領土を質草に借金
激しい権力闘争は高くつきます。資金が底をついたエウゲニウス4世は、教皇領の大部分を質に入れ、当時イタリアで名をはせていたメディチ家から2万5000フロリン金貨を借り入れることにしました。
この軍資金をもとに、エウゲニウスは教会闘争に打ち勝ち、教皇の不謬性(教皇の教えに誤りがないこと)をめぐる議論に勝利します。一方、借金の返済には目処がつかず、首が回らない状況に。結果、質に入れた土地を債権者に譲り渡さなければなりませんでした。
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