年金は税か社会保険か 民主・自民の意外な相似

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 ただし残されたハードルもある。所得捕捉の問題だ。現在政府で検討されているのが、「社会保障・税に関わる番号制度」。この導入で、所得捕捉問題は一気に解決するかのような見方もあるが、過剰な期待である。番号制度は税関連では金融所得や不動産所得の情報を名寄せする手段でしかない。必要経費への家事関連経費の混入、家族に対する給与の経費算入(専従者控除)など、自営業者や農家の所得捕捉率の低さの問題には、まったく対応できない。

「所得把握が不十分なまま最低保障年金を導入すれば、正直者がバカを見る」(自民党の森英介議員)、「事業所得者に毎月申告させるとなると、(税務署員の増員など)膨大な行政コストがかかってくるのではないか」(同・柳澤伯夫議員)

これら両院合同会議での疑問に対し、民主党政権は今も答えを持ち合わせていない。現行の国民年金(基礎年金)制度は、自営業者などの正確な所得把握が困難であるゆえに、全員一律の保険料納付額・給付額とした、いわば妥協的な産物だ。民主党はこうした現実に、どう向き合い、調整を進めるというのか。

(野村明弘 =週刊東洋経済2011年2月5日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


写真は本文とは関係ありません 撮影:大隅智洋

 

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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