家計貯蓄率がマイナス、日本経済の影響は? このままでは財政赤字を国内で賄えなくなる

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『貯蓄率ゼロ経済』を06年に著し、早くから貯蓄率マイナス時代の到来を予測していたニッセイ基礎研究所の櫨浩一専務理事は警告する。「家計貯蓄率が下がる中、企業部門の資金余剰でかろうじて経常黒字を保っている。だが、財政赤字の下で家計貯蓄率がマイナスになると、経常収支が赤字になる。その場合、財政赤字が続くとギリシャのように海外からお金を借りなければならず、金利が急騰するとともに、財政が危機に瀕する。財政赤字削減に真剣に取り組まないといけない」。

預金減少で銀行経営も様変わり

貯蓄率のマイナスは長い目で見て、余剰資金を預かって貸し出しや有価証券で運用する銀行経営に影響を与える。日本銀行によると、14年9月末の個人預金は前年同期比2・2%増なのに対し、法人預金は同4・2%増とその伸びが目立つ。

預金減少でゆくゆくは銀行再編も?(写真はイメージ)(撮影:大隅智洋)

バークレイズ証券の田村晋一ディレクターは「足元は法人預金が予想以上に増えているが、20年の東京五輪後には個人預金が減り始めてもおかしくない。今のところはまだそうした動きは顕著ではないが、預金減少は顧客減少を意味し、将来はそれが再編につながりうる」と見る。

一部の銀行では、将来の預金減少と預金争奪競争の到来をにらみ、「テストマーケティング的にネットなどで金利を優遇して、預金の獲得を試みるところも出てきている」(田村氏)。地方の人口減少はこれから一層深刻化する。10年単位で見れば、銀行経営を大きく変える可能性もある。

(「週刊東洋経済1月17日号」(1月13日発売)「核心レポート04」を転載

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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