防御は最大の攻撃なり?P&G逆転の戦略《それゆけ!カナモリさん》

 しかし、「コーティング」「汚れを防止し、簡単に汚れをキレイさっぱり落とす」という機能はP&Gにはできるが、花王にはできない。技術的にできないのではない。

白いシャツをトマトソースの飛沫で汚してしまったらどうするだろうか。ああ、早く汚れを落とさなきゃと、家に帰ったらそそくさと漂白剤に浸けるだろう。「コーティング」があれば、そうした手間は不要になる。普通に洗濯すればいいだけだ。とすると、トマトソースに限らず、ひどい汚れの場合でなければ漂白剤を使わなくなる。使用量が減る。異なるカテゴリーの自社商品同士がカニバリ(共食い)を起こしてしまうのである。

花王には、ハイター、ワイドハイターという歴史を持つ漂白剤ブランドがある。ゆえに、花王は同様の機能を付加価値として取り込まない可能性が高いのである。では、P&Gはどうなのか。漂白剤を発売していないのだ。カニバリの懸念はない。

リーダーの事業同士のカニバリ懸念を引き起こし、同質化を回避する戦略を「事業の共食い化」という。ジョンソン・エンド・ジョンソン社が奥歯までしっかり届く「リーチ歯ブラシ」を発売した。ヘッドが小さいため「奥まで届く」のである。それは消費者にとって虫歯を防げるという価値があるだけではない。競合であるライオンは歯磨き粉シェア?1であるため、歯磨き粉の消費が減ってしまうため同様の歯ブラシを作れないという「事業の共食い化」を狙ったのである。

「攻撃は最大の防御」というが、防御を固めることでリーダー企業の動きを封じるという手もある。固定観念にとらわれることなく柔軟な発想で戦い方を考えることが重要なのである。

※参考文献:『逆転の競争戦略』(生産性出版) 山田英夫・著

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2011年1月28日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。

 

ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」
  • 最新の週刊東洋経済
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 買わない生活
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ホンダ「4代目フィット」がイマイチ売れていない理由
ホンダ「4代目フィット」がイマイチ売れていない理由
京セラのガラパゴススマホ「トルク」がたどり着いた境地
京セラのガラパゴススマホ「トルク」がたどり着いた境地
「半導体パニック」自動車産業に与える巨大衝撃
「半導体パニック」自動車産業に与える巨大衝撃
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
これが世界のビジネス常識<br>会社とジェンダー

「ジェンダーギャップ指数ランキング2021」で日本は120位という結果に。先進7カ国中で最下位かつ、女性の社会的地位が低いとされるアフリカ諸国よりも下です。根強く残る男女格差の解消は、日本経済が再び競争力を取り戻すために必須の条件です。

東洋経済education×ICT