マンションは入居時点では「未完」とプロが言う訳 アフターサービス活用が修繕費削減につながる

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ところで、アフターサービスの保証期間とは、いつから起算するのだろうか。アフターサービス規準によれば、共用部の長期保証は10年が最長で「施工会社から分譲会社への引き渡し日」が起算日だ。

場合によっては「施工会社から分譲会社への引き渡し日」と「分譲会社から購入者への引き渡し日」が同日ではないため、書面で確認しておこう。同じ共用部であっても、短期保証の対象となっている部分は「区分所有者の1人がはじめに使用した日」から起算する。

専有部については、引き渡し日を基準に数える。未販売住戸などを購入した際には、ほかの入居者より引き渡しが遅れることもあるだろう。その場合、専有部分のアフターサービスについては、期限が少し後ろにずれる。

またコロナ禍により、アフターサービスの補修進捗が遅れているケースもしばしばあるようだ。起算日からカウントして、本来の期限日よりも長く後ろにずれている可能性もあるため、売り主や管理会社などに確認しておく必要がある。その結果、アフターサービスに関するアンケートの回答期間が短縮されていないかどうかにも注意しておきたい。

品確法による10年保証も専有部同様、引き渡し日から起算するルールが定められている。

新築マンションを「完成」させる

(画像:さくら事務所)

2年目以降、分譲会社・施工会社(管理会社)からアフターサービスの時期を知らせる通知はほぼないと考えていい。さらにアフターサービスは10年目にもなると、大規模修繕工事の実施時期などの劣化診断を兼ねることが最も合理的であるといえる。

だからこそ、入居早々の1、2年目のアフターサービスで対応のあった事例については、共有することも大切だ。しかし専有部においては「ほかの方には内緒にしてほしい」という形で、購入者間のアフターサービス対応に関する情報共有を売り主がよしとしない傾向にある。

マンションは分譲された時点では「未完」なのだ。分譲後、ある程度の期間を経て発覚した不具合をしっかり補修することで、ようやくマンションは完成する。そのためにアフターサービスはさらに活用されていいはずだ。マンション管理組合の理事会・委員会が率先し、専有部・共用部のアフターサービスの状況を共有するシステムを整備、ひいては修繕積立金の運用、削減などにつなげていくべきである。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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