東証の市場再編で「上昇しそうな企業」はどこか 金融相場から業績相場移行へのきっかけを期待

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はたして、今回は東証1部、2部、ジャスダック、マザーズの順によるランク付けの意味合いがあった従来の市場から、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場との関係をフラット化しようという東証の意図を、投資家が評価するか。

「適合計画書提出グループ」に妙味

プライム市場は1839社のほとんどが東証1部からの移行組だが、上場基準(株主数・流通株式数・流通株式時価総額・その他)を満たしたプライム銘柄と、基準は未達だが「適合計画書」(プライム市場基準達成に向けての具体的取り組みを示したもの)提出による経過措置銘柄(295社)とに分かれる。

「経過期間」はまだあいまいで、これからの問題だが、この295社の複数の「適合計画書」を読むと、当該企業の目標が鮮明になり、投資家にとってはこの「計画書提出グループ」が魅力ではないかと思う。上場企業にとってプライム市場はやはり魅力であり、必死に頑張るだろうというわけだ。また、上場基準完全達成組は新市場の中核銘柄として、外国人投資家の人気を集めると思われる。

一方、スタンダード市場は、日本経済の中核を担う企業と銘打っているように、東証2部銘柄からの移行組にとってはかなりのイメージアップになるだろう。

グロース市場も、ジャスダックやマザーズよりわかりやすく、そのものズバリの成長性をイメージできる。何よりも、日本企業の経営者にアグレッシブな気持ちが高まれば、業績アップにつながり、現在の相場に足りない、「上げる理由」の神輿として、投資家は担ぐのではないか。

最近はウクライナリスク、金融引き締めリスク、オミクロン株リスクを織り込む低迷相場が続いていた。だが、「リスクは予想で売って実現で買う」の相場格言どおり、今は現状のリスクを織り込んだ結果の、底入れ反転相場となっている。

ただ、リスクそのものが解決したわけではなく、現状の株価のさらに上を買う理由は今のところ見当たらない。終わりかけている「金融相場」が「業績相場」へつながっていくきっかけが、この新市場のスタートになると期待する。「73年ぶりのお祭り」で日本経済は大復活するかもしれない。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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