逝去から2年、志村けんの笑いが今こそ必要な訳 重苦しいムードが漂う中で、春らしい笑顔を

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一方、今や強力なライバルとなったYouTubeや動画配信サービスなどのネットコンテンツは、世間に浸透し、影響力を増していながらも、テレビほど表現の制限やコンプライアンスの遵守が強く求められることはなく、それらに関連した批判も、まだわずかなものにすぎません。

その意味でテレビマンたちが、「莫大なお金を得ているYouTuberが再生回数狙いでやらせやパクリをやってもほとんど批判されない」という不公平さを感じてしまうのは当然でしょう。「不利な戦いを強いられている現状を少しでも変えたい」「できるだけ表現の幅を広げて、批判を受けづらいようにしたい」というのが彼らの本音なのです。

だからこそ、かつて批判を受けながらも、絶大な人気を獲得し、今なお親しまれている志村さんやドリフターズのコントは1つのきっかけになりうるもの。昨年9月26日、現役バリバリの芸人やタレントが名作コントに挑戦する「ドリフに大挑戦スペシャル」(フジテレビ系)が放送されたことからも、そんな思いがうかがえます。

志村さんのコントで春の訪れを喜ぶ

ここまで志村さんとドリフターズのコントが今、求められる理由として、「春らしい明るく笑えるコンテンツを届けたい」「現在の視聴者嗜好に合う笑い」「バラエティにおける表現の幅を再び広げていきたい」の3つを挙げてきました。

最後にもう1つだけ加えておきたいのは、「いまだに志村さんが亡くなったのが信じられない。実感がない」という人に向けた番組であること。当たり前のようにいた人を突然失ってしまったとき、受け入れるまでの時間には個人差があるものです。かつてのコントを見ても、「笑っているのに切なくなって涙がこぼれてしまう」という人が、「やっと受け入れることができた」と思えるまで、主にフジテレビが志村さんとドリフターズのコントを定期的に放送し続けてくれるのではないでしょうか。

志村さんが亡くなって以降の春は、「春の訪れを喜ぶ」「前向きな一歩を踏み出す」というムードが感じづらくなっています。だからこそ志村さんとドリフターズのコントで春らしい笑顔になってほしい。もしかしたらテレビマンだけでなく、志村さん自身も天国でそう思っているのかもしれません。

昨年末の特番で盟友の高木ブーさんは、「僕らがやってたコントで40年たっても笑ってもらえるのはありがたいし、うれしいよね」とコメントしていました。大人も子どもも、変なおじさんのダンスに笑い、「だっふんだ」のひと言で一緒にズッコケる。それだけで今年の春は少し明るいものになるような気がします。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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