49歳の常務を社長に抜擢したオムロン、驚きの人事が狙うもの
制御機器が主力のオムロン(本社京都市)は17日、山田義仁・執行役員常務(49)が6月に社長に昇格する人事を発表した。在任8年になる作田久男社長(66)は代表権のある会長に就く。創業家の立石義雄会長(71)は取締役を退任し、名誉会長に就任する。創業一族で代表権を持つ役員がいなくなるのは、同社では初めて。
「こんなに若い人が社長になるの」。今回の社長人事には、社内外から驚きの声があがった。山田氏は作田・現社長よりも17歳も若い。しかも、1984年に入社して以降、一貫して健康医療機器(ヘルスケア)分野を歩んでおり、主力の制御機器部門の経験がない。
社長交代で海外戦略推進
それでも、山田氏を経営トップに据えるのは、経営陣の若返りと同時に、オムロンが今後海外戦略を推し進めていくことを意味する。
オムロンは収益体質の改善にメドがつき、この4月から10カ年の長期経営構想をスタートさせる。海外売上比率がすでに50%を超えており、中長期的にもアジアなど海外での成長に注力する方針だ。
2010年3月からグループ戦略室長として次期経営構想をとりまとめた山田氏は、新興国市場の開拓で実績を持つ。ロシアや中東など、まだ進出していなかった地域に乗り込み、地元の医療従事者と人脈を構築しながら、血圧計などのヘルスケア機器を売り歩いた。
08年秋以降の世界同時不況に直面すると、ヘルスケア部門のトップとして改革を断行。開発、生産、営業などの各部門の壁を取り払ったうえで原価低減に取り組み、部門収益を拡大した。
「若いのに、海外にどんどん出て行く。ガッツがある」というのが、もっぱらの社内評。作田社長も「若さと情熱があり、オムロンをまとめる指導力がある」「チームを引っ張る求心力がある」と、経営トップとしての手腕に期待する。山田氏も同日に京都市内で開かれた会見の席上で、「次の長期ビジョンでは真のグローバル化を進めたい」と、アジアを軸とした海外事業の拡大を目指すことを強調した。