与党の大醜態「年金受給者5000円給付」撤回の裏側 バラマキ批判におびえて、責任のなすり合い

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
岸田文雄首相(左)と高市早苗・自民党政調会長(右)(写真:つのだよしお/アフロ)

2022年度予算成立の直前に、政府・与党内で突然浮上した年金受給者への一律「5000円給付」案が、事実上“撤回”の方向となった。「参院選に向けたバラマキで、極め付きの愚策」(立憲民社幹部)などの激しい批判に、岸田文雄首相も28日の参院決算委員会で「本当に必要なのかどうか」と再検討の意向を示した。

同案を政府に提起した自民、公明両党幹部も態度を一変。野党だけでなく大多数の国民からの批判に怯えた結果、自民党の高市早苗政調会長は29日夕、「もうこの話はなくなった」と明言した。

その一方で、方針転換に伴う自公両党の「裏舞台での責任のなすり合い」(自民幹部)も表面化。同案提起を主導したとされる茂木敏充自民幹事長に対し、公明党は「こちらが考えたわけではない。いい迷惑だ」(幹部)と不満を漏らすなど、与党内のあつれきも隠せない。

そもそも、同案の「提起」も「撤回」も唐突で、政府与党内での根回し不足は明らか。しかも、「今回の与党の混乱で、岸田首相の指導力も問われる」(自民長老)ことは確実で、「どう落とし前をつけるか」(同)が岸田政権の浮沈にもかかわる事態となっている。

物価高騰の緊急対策として案が浮上

ロシアのウクライナ侵攻を受けた物価高騰を憂慮する岸田首相は、3月29日午前の閣僚懇談会で「原油や穀物の価格上昇が社会経済活動の順調な回復の妨げ」になると指摘。自らをトップとする関係閣僚会議を設置し、与党との連携による4月中の緊急対策策定を表明した。

この対策は①原油高対策、②資源・食料安定供給、③中小企業支援、④生活困窮者支援の4本柱。政府は2022年度予算に計上した総額5兆5000億円の予備費を財源とする方針で、自公両党も政策担当による議論を急ぐ。

そこで注目されたのは、予算に賛成した玉木雄一郎・国民民主代表が強く求めているガソリン税減税のためのトリガー条項の凍結解除案と、年金受給者への一律5000円給付案の取り扱い。

前者については自民、公明、国民民主の3党協議で4月中に結論を出すことを確認。政府も「凍結解除も含めて検討する」としており、与党内には「(凍結解除は)すぐ効果が表れる」(公明幹部)との声もあり、実現の可能性が見込まれる。

次ページ一律5000円給付案は白紙に
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事