10年間も付き合った男性と別れた後、ベッドの上で一人震えた夜もあった。寂しさや悲しみからではない。母親譲りの愛情を誰かに注ぎたくて仕方ないのに、その対象がいないことで苦しかったのだ。
ただし、千秋さんがどうしても譲れない結婚の条件は「ちゃんと働いていてうそをつかない男性」。酒場などで知り合う社交的な男性たちはどちらかの要素が欠けていた。
出会ったのは、13歳年下のアニメオタク
千秋さんは考え方を変えることにした。周囲にいるようなタイプではなく、「根暗でオタク」な男性を狙うことにしたのだ。その他の条件はすべて取り払い、マッチングアプリで相手を探した。そして出会ったのが13歳年下の修平さん(仮名)だった。
「大阪には日本橋オタロードというオタクの聖地があります。彼はアニメが好きで、月2、3回はオタロードに通っているというのです。だから会ってみることにしました」
修平さんは高校を卒業してから工場で働いている。夜勤もあり、友だちも多いほうではない。たまに競馬場に行き、数百円単位で勝ったり負けたりすることを楽しんでいるらしい。
「会ってみたら、オタクなのは見た目だけ。髪はボサボサで無精ひげが伸びていて、ダサい眼鏡とイオンモールで買ったような服を身に着けていました。アニメに興味を持ったのは一瞬だけらしく、全然詳しくありません」
千秋さんはそんな修平さんに輝くような美徳を見つけた。とにかく真面目で誠実なことだ。他人から騙されてしまうほどだという。
「私の前にマッチングした若い女の子からは、1時間ほど話した後に『1万円でいいですよ』とお金を要求されたそうです。そういうものかなと渡してしまったと聞いてかわいそうになりました。もちろん私はそんなことはしません。彼とお茶したときのお金は全部払いました。年上ですから」
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