成否を分けたのは品質の追求だけではない。その認知度を押し上げたブランド戦略に迫った。
2月4日に開幕した北京冬季五輪。真っ赤な五輪ウェアを着た日本の選手団が続々と現地入りし、熱い戦いを繰り広げている。
開催期間中、日本の選手団の睡眠を支える寝具メーカーがある。東京・大手町に本社を構えるエアウィーヴだ。同社は日本オリンピック委員会(JOC)とTEAM JAPANオフィシャル寝具パートナー契約を締結し、北京冬季五輪に出場する日本の選手団にマットレスパッドと掛け布団を提供している。
エアウィーヴの前身は愛知県にある、釣り糸の押出成形機械のメーカー。釣り糸を作る技術を応用し、糸状のポリエチレン樹脂を絡めたクッション材も生産していた。そこからマットレスパッドの製造にも手を広げ、2007年に寝具業界へ参入。マットレスパッド(スタンダードモデル)は6万6000円(税込)、高機能モデルは10万1200円(税込)と、価格は比較的高めだ。
現在はマットレスパッドのほか、マットレスや敷き布団、枕などさまざまな寝具関連の製品を展開している。
先行者優位でも勝ち抜けたわけ
寝具は先行者の優位性が高い業界とされる。布団やマットレスを実際に触ったり、試してもらうことが客の購入へとつながりやすく、百貨店の寝具売り場に自社製品を置けるか否かが勝敗を分けるためだ。売り場のほとんどを競合に取られていたエアウィーヴは、「睡眠の質」へのこだわりで差別化を図っている。
一般的にマットレスやマットレスパッドの中材にはウレタンが用いられており、競合他社は素材を開発するメーカーなどに受託依頼している。一方、エアウィーヴはポリエチレン製の極細繊維を使った、独自素材のエアファイバーを採用。ウレタンと異なりエアファイバーは水洗いが可能なため、清潔な状態を保って寝ることが可能だ。
また中材は自社工場で製造しているため、より機動的に新製品を投入することができるという。エアウィーヴは西川など老舗が名を連ねる市場で勝ち抜き、2016年を除いて売上高は右肩上がり。直近の2021年12月期は前年同期比7%増の195億円で着地した。
ただ、いくら質がよくても認知度が低ければ、客の購入にはなかなかつながらなかった。そこで同社が取ってきた戦略が、五輪選手のような「その道の一流」と組むブランディングだ。
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