前代未聞の観光不況を招いたコロナ禍。有力ホテルチェーンの藤田観光が直面した経営危機の舞台裏に迫った。
直面した債務超過転落の危機
――早期から資金調達など財務の対策を余儀なくされました。
2020年4月に12の銀行から約200億円を借り入れ、資金繰りには何とか手を打った。だが、12月末にも債務超過に転落する可能性があった。上場会社だと、一度でも債務超過になると投資家、利用者の方に不安を与えてしまう。それは絶対回避しようとやってきた。
【2021年10月29日11時38分追記】初出時に記載した銀行の行数を上記のように修正いたします。
Go Toトラベル効果もあって12月末は免れたが、2021年1~3月は結婚式、宿泊とも客が少ない時期で、海外客も来られない。3月末には債務超過に転落する可能性が再び出てきた。そこで、いろいろな得意先や取引先に増資の件をお願いして回った。
だが、金額的に間に合わなかったため、やむなく大阪の宴会場である太閤園を売却することになった。その後も、資本を充実させなければ次に何かを進めることも難しくなるので、日本政策投資銀行の飲食・宿泊業支援ファンドに優先株を発行し、150億円を調達した。第一に考えたのは既存株主の権利で、希薄化させないこと。投資ファンドによる出資は後で希薄化が生じる。それはなんとか回避したいと思っていた。
――太閤園は332億円の売却益となり、財務の改善に大幅に貢献しました。取引としてはどう評価していますか。また、椿山荘を売却する可能性はあったのでしょうか。
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