2月上旬、都内のビジネスホテルには大型トラックが2台横付けされ、作業員がせわしなく出入りしていた。作業員に尋ねると「内部の解体です」とのこと。このホテルは和を前面に打ち出しインバウンドを狙った業態だが、出店1年目にしてコロナ禍に襲われ、長期の臨時休業となっていた。
2020年はビジネスホテルにとって転落の年だった。コロナによる緊急事態宣言中の休業などが響き、とくに前半の稼働率は過去に類を見ない下落幅となった。
ビジネス主体の「ワシントンホテル」と観光主体の「ホテルグレイスリー」を運営する藤田観光の部門売上高(2020年1~9月、宿泊売り上げ)は前年同期比73%減の61.5億円に落ち込んだ。
「ビジネスは値下げしても埋まらない」
「ワシントンホテルプラザ」や「R&B」を展開するワシントンホテルも、4~9月期の客室稼働率が前年同期比65ポイント減の14.1%と急低下。同じ時期、比較的影響の小さかった「ドーミーイン」(共立メンテナンス)ですら、同34.4ポイント減の57.2%だった。
2021年に入ってからも、状況は好転に至らない。長引く緊急事態宣言の影響で、業界大手の東横インは営業を集約し、2月現在、国内21店舗を休業中(コロナ療養用の貸し出しを除く)だ。阪急阪神ホテルズも都内や大阪のホテルを一部休業し集約している。その他も多くのチェーンが店舗の休業を決めている。
業界関係者は「人の移動が止まっている。ビジネスは値下げしても埋まらない」「営業中の店舗は2020年6月の移動制限があったときのような低調」と語る。冒頭のようにインバウンドの獲得を目的に出店したホテルなどは、国内客の獲得に切り替えることも難しく、臨時休業が長引くケースが見られる。
2019年まで市場は絶頂だった
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら