ハウステンボスを売却し、本業の旅行や新事業で業績浮上を狙うHIS。そんな中、澤田秀雄会長の長男の澤田秀太氏が、新設の投資戦略本部長に就任する。期待される役割と澤田会長の跡継ぎとなる可能性は。
旅行会社大手のエイチ・アイ・エス(HIS)はこの2年以上、主力の海外旅行を封じられ、守りの策に追われる苦しい状況だった。
コロナ禍で2度の増資を決行し、社員は1300人が出向。神谷町の本社を売却、大赤字だった電力小売り事業も譲渡。直近では長崎のテーマパーク・ハウステンボスの売却を決めた。10月には税負担の軽減を目的に資本金を1億円に減資する。
そんな中、8月末に1枚のリリースが発表された。「役員の委嘱変更のお知らせ」。創業者である澤田秀雄会長の長男で、取締役上席執行役員の澤田秀太(ひでたか)氏が、11月に新設する投資戦略本部長に就任するというものだ。
秀太氏は2020年にHISの取締役(非常勤)に就任。今年4月には常任取締役となり、国内旅行事業を担当している。さらに役職を兼ねる背景は何か。
コロナ前から画策していた人事?
あまり知られていないが、HISの経営体制は今期、大きく変化している。3月に澤田秀雄会長が社長職を退き(代表権とCEOは変わらず)、矢田素史氏(61歳)が代表取締役社長COOに就任した。
矢田社長は陸上自衛隊出身で1993年にHISに入社。傘下の九州産業交通の社長を務め、2020年にHISに取締役として戻ると、主にCFOとして資金確保などを進めた。子会社でGo Toトラベルの不正取引が発覚した際は、社内調査委員会で対応にあたっている。
澤田会長は現在71歳。社長交代はコロナ前から検討しており、一定程度財務が安定した場面での交代だった。「組織経営に移行し、経営(CEO)と執行(COO)を分けることでスピード感を持って対応できる。単発的な人事ではない」(広報)。つまりワンポイントリリーフではないという認識だ。
組織経営を掲げる一方、存在感を強めているのが40歳の秀太氏だ。秀太氏はクルーズ予約サイト運営のベストワンドットコムの会長でもある。日興コーディアル証券出身で、運用のアドバイスやM&A、投資などを担当した。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら