旅行大手のエイチ・アイ・エスが傘下のテーマパーク「ハウステンボス」を株式譲渡も含め検討中だ。テーマパーク事業は足元で黒字で、当面の資金繰りにも不安はなさそうな中、売却を検討せざるをえない切迫した事情とは。
長年の課題が再び動き出したか。旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が傘下のテーマパーク「ハウステンボス」(長崎県佐世保市)を投資ファンドなどに売却しようと動いていると報道された。会社側は株式譲渡を含め検討中としつつ「何も決まっていない」としている。
関係者からすれば「何度も浮上しては消えてきた話」だ。経営不振のハウステンボスは2010年にHIS傘下に入り、澤田秀雄会長主導で再生を果たした。ただ業績は2015年をピークに伸び悩み、HISも「売れれば売る」方針だった。
実際、複数の打診があり、2018年には中国のコングロマリット・復星集団の出資受け入れを表明(後に中止)。2020年12月の決算説明会でも、澤田会長は「売却すれば700億~800億円になる」と言及していた。
ハウステンボスは足元で黒字
ハウステンボスは足元で黒字(2021年11月~2022年4月期のテーマパーク事業)を確保している。5~7月期も黒字の見通しだ。柱の海外旅行などが大幅赤字に沈む中、黒字事業を売却し資金確保を急ぐとすれば、どんな事情があるのか。
業況は実に厳しい。2021年11月~2022年4月期は売上高684億円(前年同期649億円)、269億円の最終赤字(同235億円の赤字)だった。海外旅行の回復は鈍い。2019年度は月間260億~470億円で推移した取扱高は、現在数億円から10数億円程度。5月も19億円と低水準だ。
「変なホテル」などを展開するホテル事業も、海外リゾートの集客難が影響し赤字が続く。エネルギー事業も電力調達価格の高騰を受け、上期に94億円もの赤字を計上。想定外の打撃となり、5月、電力小売事業を光通信グループに売却した。
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