日本最北の「猫島」、田代島に行ってみた 猫好きなら、一度は訪れたくなる離島

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そんな田代島の南東にある網地島(あじしま)も、実は最近猫が増えてきている。田代島ほどではないが、ふたつの浜の住宅地の中では、複数の猫がいろいろなところで昼寝やひなたぼっこをしている。

こちらの島は田代島より広く、人口も500人弱。北側の網地には白い砂浜があるため、夏になると石巻から若者たちが海水浴にやって来る。宮城県に白浜がある浜は、実はここだけ。それだけにペンションも数件あり、夏は多くの人たちで賑わっている。

「獣医さんもいないし、避妊という感覚はないんでしょうね。島には山もあるし、小動物がいる。猫がそれを捕ってくれるならありがたい。共存という関係。だから、頭をなでたりブラッシングしたり。最近では、夏に泳ぎに来た海水浴客が、他の季節にも猫を見に来るようになりました」

もしかしたら、猫好きにとっての「新しい猫島」ができている途中なのかもしれない。

砂漠の生き物なのに、なぜニッポンにまで?

それにしても、猫はなぜ、港にいるのだろうか。猫の祖先は砂漠で生まれたリビアヤマネコが家畜化したものだと言われている。

元々は水のないところの生き物だ。小動物、とくにネズミを捕ることを得意としたことから、世界中に広がったと言われる。

北欧のバイキングたちが、船の中の穀物をネズミに食べられないために、猫を船に乗せて、スカンジナビア半島に連れて行ったという話が有力。砂漠から氷の世界へ、だ。猫は極寒の地に適応するために、脂肪を分厚くし、長毛にして体を温めるように変わっていった。このように、自分の体を変えることで、世界中でさまざまな姿をした猫が見られるようになったというのである。

砂漠で生まれた猫の祖先だけど、海の男たちと縁があり、そして日本という海に囲まれたところまでやってきた。さらに、海の見える平和な島で、のんびりと暮らしているのだった。

石丸 かずみ ノンフィクションライター

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いしまる かずみ

いしまるかずみ/ノンフィクションライター 千葉県出身。ビジネス、マネー、医療/介護を中心に執筆。茨城県で被災。著書に「石巻赤十字病院、気仙沼市立病院、東北大学病院が救った命」「石巻・にゃんこ島の奇跡」「いちばんやさしいネコの気持ちがわかる本」「マーブル猫」など。
 

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