政府も戦略立案に使う感染症疫学。それを平易に解説し、状況を整理する。
新型コロナウイルスの感染の行方を理解するのに有用なツールがある。感染症疫学の数理モデルだ。政府の専門家会議の一員である北海道大学の西浦博教授らは、これを使って戦略立案に協力している。ここでは、感染症疫学の基本を用いて現状を整理してみよう。
感染者数の推移を予想するとき、重要な変数となるのは、病原体の感染力を示す「基本再生産数」という数値だ。これは、ある感染者がその感染症への免疫をまったく持たない人の集団に入ったとき、感染力を失うまでに平均で何人を直接感染させるかを指すものだ。
WHO(世界保健機関)は新型コロナの基本再生産数の暫定値を1.4~2.5とする。8~10の水痘(水ぼうそう)や16~21の麻疹(ましん、はしか)より低く、2~3のインフルエンザ並みだ。
注意すべきは、基本再生産数は人間が何の対策も取らなかった場合の数値であることだ。いってみれば、病原体の素(す)の感染力を示す。一方で、手洗いや外出制限などの対策が取られれば、1人の感染者が実際に直接感染させる人数が減るのは当然で、この再生産数を「実効再生産数」と呼ぶ。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら