氷河期世代支援で経済界の協力を要請してきた安倍晋三首相は、現状にやや不満かもしれない。経団連や経済同友会などに加盟する上場・大企業において、氷河期世代の正社員採用の取り組みが極めて鈍いのだ。
本誌は、人手不足が著しい外食・小売りの主要上場企業約100社に対して、氷河期世代に特定した正社員募集の意向があるか、アンケート調査を実施した。その結果、「意向あり」はゼロだった。大半が「氷河期世代に特定せず、あらゆる世代で優秀な人材を求めている」と答えた。
ある経済団体幹部は「心情的には協力したいが、現実には難しい」と話す。それもそのはず、だ。
大企業は依然として、新卒一括採用で学生をゼロから職務無限定の総合職として育て、競い合わせて幹部選抜を進めていく人事手法を捨てていない。幹部候補の引き抜きなら別だが、中年になった氷河期世代を今さら総合職のプールに入れることはできない。
最近では、経団連が日本型雇用慣行の見直しを叫ぶが、あくまでAI(人工知能)などの先端技術者をめぐる外国資本との取り合いの一環だ。総合職より高給のジョブ(職務)型雇用を一部に導入するもので、氷河期世代採用とは文脈が異なる。
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