絶好調ミネベアがそれでも手を緩めない理由 「5本の矢成長戦略」でM&Aを加速
さらなる成長の布石となるか。ベアリング大手ミネベアは22日、ドイツの計測機器大手、ザルトリウス・メカトロニクスT&H(SMTH)を日本政策投資銀行(DBJ)と共同で買収すると発表した。ミネベアは2012年2月、DBJとM&A支援などで業務・資本提携しており、今回の買収はその第一号案件。出資比率はミネベアが51%、DBJが49%となる。
SMTH社はタンクやホッパー(荷下ろし機)といった産業用の計測機器を手掛け、金属探知やX線による異物検知などの検査機器や超精密はかりも展開する。欧州を中心にハイエンド向けの市場でのシェアは高く、売上高は約150億円に上る。産業用の計測機器は今後市場拡大が見込まれているが、目下ミネベアの計測機器は車載や家電向けが中心。一方、SMTHは食品や飲料向けに強みをもっているため、同社の買収を通じて産業向けの製品拡充を図る考えだ。
5つの新領域で成長図る
また、SMTHの事業展開地域は欧州が中心。ミネベアの計測機器事業としては今後力を入れたい地域で、買収を足掛かり欧州への進出も見込める。計測機器事業はは合併により来期売上高が320億円に膨らむ計画(前期は約114億円)だが、両社が販売エリアを広げることによるシナジー効果などで17年度には売上高は500億円にまで膨らむとみている。
買収効果は計測機器分野にとどまらず、「資本参加している(スイスの)パラドックス・エンジニアリング社の無線技術を生かせばさまざまなシナジー効果を生み出せる」(同社)。13年12月に出資したパラドックス社は、電気・照明関連の無線ネットワーク技術を持つ企業で、Wi-Fiのような一般的な無線だけでなく、あらゆる無線通信プロトコル(規格)に対応できる技術を持っているのが強み。たとえば、ミネベアとSMTH、パラドックス社の技術を融合することで、タンク内にある特定の物質の残量などの測量数値を無線で飛ばし、工場などが生産管理を図るといったことも可能になると考えている。
もっとも、ミネベアにとってSMTHの買収は成長戦略の一つに過ぎない。
ミネベアは現在、「5本の矢成長戦略」と銘打ち、計測機器や航空機部品、照明機器関連など5つの事業領域での収益拡大などを目標に掲げている。これらを実現するためにM&Aも積極的に行う姿勢を見せており、実際12月には航空・宇宙分野の高難度、高品質部品の加工を手掛ける塩野製作所のスポンサーに名乗りを上げ、15年1月に同事業を譲り受ける予定だ。自社の技術やノウハウに他社の技術を掛け合わせて「ミネベアしか作れないものを作る」(貝沼由久社長)ことで、複数の分野でのシェア拡大を狙っている。
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