トヨタ下請け企業、「絶品シェーカー」に挑む

金型づくりで培った独自の技術を活用

名古屋・錦のバーで「BIRDY.」を使うバーテンダーの松本貴之さん

トヨタ自動車の下請け企業は全国に約3万社。円安の恩恵もどこ吹く風で日々これカイゼンに励む、というストイックな印象をお持ちの方も多いだろう。だが今、そのクルマづくりの技術と情熱を「カクテルシェーカー」づくりに振り向けている下請け企業がある。酒好きの道楽? などとあなどるなかれ。目標は本気の世界進出、新しい「ジャパン・ブランド」の創出なのである。

そのカクテルシェーカーのブランドは「BIRDY.(バーディー)」。ゴルフのバーディーにかけ、パーより一段上を、という意味が込められている。この10月、経済産業省の「JAPANブランドプロデュース支援事業」の一つに採択された。すでにイギリスの超老舗ホテル「ザ・サボイ」のヘッドバーテンダー、エリック・ロレンツが認めるコラボレーション商品も誕生。イギリス、ドイツ、ギリシャなどカクテルの本場ヨーロッパに乗り込み、さらにロシアやオーストラリアにも販路を広げようとしている。

プレス工場の一角に「秘密」の小部屋

手掛けているのは愛知県豊田市の自動車部品メーカー、横山興業だ。創業は1951年。トタン板製造の専門店として出発し、金属プレス分野から自動車業界に参入。シートの骨組みをはじめとした各種自動車部品と、建築資材や太陽光発電システムの製造、販売を主にしている。

会社と工場はトヨタ本社から目と鼻の先。工場には大小さまざまな溶接機やプレス機が並び、カーンと耳をつんざく金属音とともに、複雑な形状の部品がゴロンゴロンと生み出されていく。その一角に「関係者以外立ち入り禁止」の紙が張られた小部屋。責任者である商品企画室長、横山哲也さんの案内で中に入れてもらった。

「写真は撮らないでください。従業員にもSNSなどにアップしないよう注意しています」。やんわりと釘を刺しながら、横山さんはここでつくられる製品について丁寧に説明してくれた。

カクテルシェーカーは高さ19.2センチ、直径8.4センチ。本体は金属洋食器の生産で世界に知られる新潟県燕市でつくられたステンレス容器だ。その内側を、この小部屋でひたすらに磨き上げるのだという。自動車の金型をつくり出す技術を応用して、手作業でいくつもの加工を施すと…。「劇的に変わるんです。このシェーカーでつくったお酒の味わいが」。

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