こうした計画の途中での抜本的変更などは、従来の行政主導型の開発では、事実上極めて難しいのです。
武雄市とは真逆の、オガールの図書館の発想
今回は、「オガールプロジェクト」の中核をなす「オガールプラザ」にある、図書館の話を中心にしてきましたが、公と民が協力する図書館と言えば、最近では、佐賀県・武雄市の「武雄市図書館」(蔦屋書店 武雄市図書館)が有名です。同図書館は、武雄市がCCC(カルチュアコンビニエンスクラブ)に指定管理委託をして(つまりお金を払って)図書館を運営しています。
しかし紫波町の「オガールプラザ」は「その先」を行っています。つまり、民間企業であるオガールプラザの運営会社と入居テナントが、紫波町に家賃や固定資産税などを逆に支払っているのです。紫波町からオガールプラザへは、一切の委託料や補助金などは出ていません。
オガールプラザに入居した民間テナントである、カフェや居酒屋、マルシェや学習塾、クリニックなどでは多数の雇用が生まれています。さらに紫波町図書館は安価に建設された図書館ですが、当初の計画を大きく越えて年間10万人ではなく、30万人を超える人が来館し、巨額の開発予算を投じた盛岡駅前の県立図書館に引けをとらない貸出冊数を誇るようになっています。
地元の主力産業である農業関連の書籍のラインナップも素晴らしく、図書館内では勉強会も頻繁に行われています。中高校生も多く来館して、夕方にはフリースペースを使っています。従来は利用を「吸い取られていた」、盛岡市や花巻市からさえも、逆に利用登録をもらえるようになりました。
これは、地元の民間人が高い「パブリックマインド」をもち、町長はじめ議会も民間を信頼し、さらに自治体職員が手続きを含めて自治体法務と向き合って結実したプロジェクトだからこそできた成果と言えます。
地方創生を考えるとき、「地方は弱っているから、政治や行政の力でどうにかしてもらおう」といった話が出てきがちです。しかし、それではうまくいかない、というのがこれまでの地域再生政策の結果だと思います。単に助けてもらうのでは、再生はないのです。
何より、いつまでも国から地方へと権限移譲などといって、「主導権」と「税金」を奪い合ったりしているのは、もう諦めたほうがよいように思います。むしろ、地方で民間が金融機関と向き合い、知恵を絞って「公共施設や経済開発をセットにした、新たなプロジェクトを開発する」ほうが、よほど可能性があるということです。
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